盗撮魔のシンレイ写真
テラホラ拓也
盗撮魔のシンレイ写真(読み切り)
「春紀のことなんて、知りません!アイツにはホントにウンザリなんです。」
春紀が行方不明になって三日が経ち、警察が学校へ訪問している。ナツは彼の知人のため、警官から尋問を受けていた。
しかし春紀はナツの一歳下の後輩で、同じ塾だが彼は一ヶ月前に退会している。それに加え、ナツは春紀を嫌っている。彼がよく盗撮してくるからだ。先輩とただ会話していただけの所を撮られ、それをグループLINEに晒されたため、良からぬ噂が立たぬかで相当迷惑だったからだ。
(アイツのことなんてどうでもいい。 …けど、あの動画は何だったんだろう?)
ナツは春紀に一つの疑問を抱いていた。LINEに送られてきた五秒程の動画である。内容は、ただ春紀が近所を走って息切れしているだけである。これが行方不明になった次の日に来たので謎が深い。一応警察に動画を見せたが、これといった音沙汰は無い。
――春紀の趣味は盗撮である。
自分でいうのもアレだが、標的をこっそり隠し撮り、そうして得た写真を公に晒す。そうして見る他人の反応に夢見心地になり、優越に浸れたため、以来同じ塾の生徒を隠し撮るようになった。
だが、ある時、写真の中に変なモノが写った。ショートヘアで前髪で目元を隠した少女(?)が隅っこからこちらに向いている。
勿論、そんな人物は撮った時点ではいなかったはずである。
(えっ、心霊写真⁉ こっわ!)
そう思うだけで春紀は、それ以上気にしなかった。しかし、ここ一週間春紀の写真には確定で隅の方にあの少女が写ったことを、春紀自身気づいていなかった。
そして、気づいたときには…
別の日、塾で親しい友人を撮ろうと、春紀はスマホのカメラのシャッターを押す。すると、
「うわっ!」
そこには、友人に覆い被さるように写り、前髪で隠れていても、血眼なのがわかるくらいの眼差しを春紀向ける少女がいた。
塾の自習室は常日頃騒がしいため、春紀の悲鳴を気にする者はいなかった。
「先生、忘れ物したんで帰ります。」
そんな嘘をついて、荷物をリュックに詰めこむと、春紀は塾を出た。
少し歩き、不動産屋のショーウィンドウに映る自分を見たとき、その後ろに、前髪で隠さず今度こそ怨念を示唆する血眼と一緒に、ソイツがいた。
「うわぁぁぁぁ!」
人通りの少ない通学路を、春紀はひたすら走った。走った。走った。
(なんだよ。なんなんだよ。あの女⁉)
恐怖が疲れを押し殺し、目を瞑る春紀を一層走らせた。
(なんなんだよ。俺が何したってんだ。)
そう思った途端、春紀は足を止め、汗が入らないようにしてた目を開けた。
(そうだよ。俺が何したんだよ。逆に迷惑かかってんのは俺だよ。)
春紀は、そう思い再び走った。人に迷惑をかけ、人に恥をかかせた。あの女は許さない。絶対に正体を突き止め、一泡吹かせる。その瞬間を、戒めとして、晒してやる。春紀は、走りながら、スマホのRECを起動させた。正体を暴こうと躍起になっている。
それから六分程スマホのカメラを片手に走っていた。
「フフッ」
すると、女の子の笑い声が聞こえ、振り返ると……
…お風呂上がりで、ナツは、深夜TVの幽霊特集を観ていた。
「次はこちらの映像を、ご覧ください。」
進行のアナウンサーの台詞とともに、画面が切り替わる。そこには、
(えっ⁉あの動画!なんで?)
背景にはスモークがかかっているが間違いなく、あの日の動画である。ただ走ってる春紀は、その後すぐ後ろを振り向いた。
「キャア!」
画面には、血走った眼でこちらを見ている口は耳まで裂ける程の笑みで、そこから血で汚れた歯が剥き出しになっていた顔。
だが、その肌も、瞳も、唇も、全てが生き生きとしている。
「これは、生霊の仕業ですね。生きていても、怨念が体から魂を引き剥がしちゃうんですよ。」
そんな専門家の話が終わった途端後ろから、
「フフッ、自業自得ヨネ。コレデ迷惑スル人モ、モウイナイ。」
そんな声が聞こえた。
――[完]―
盗撮魔のシンレイ写真 テラホラ拓也 @toyo0706
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