第32通目 バッグハグ

作らなきゃ・・・作れないじゃん。俺。


料理覚えればよかったな。


「透夜くん、お夕飯作るね」


「あのさ、陽芽。俺も手伝っていいかな?

あんまり役に立たないだろうけど」


「うふふ、うん。一緒に料理しよ。

えへへ、ちょっと憧れてたんだ」


陽芽は、エプロンをした。


コットン素材のピンク色のエプロンだった。


ポケットが二つ付いている。


その姿を見るとドキっとした。


「お嫁さんみたい」


おっと、口から出てしまった。


それを聞いて、顔を赤くした陽芽が振り返った。


「もぅ・・・でも、私は透夜くんのお嫁さんだよ」


凄く陽芽の事が愛しくなって、俺は後ろから彼女をハグした。


そして、無意識でハグしていることに気づいて俺は顔を赤くした。


俺の目の前に見える陽芽の耳が真っ赤になっているのも見えた。


陽芽の甘い匂いが俺の鼻腔を衝く。


香りに心が魅了される。


いや、ずっと前から魅了はされているか。


「と、透夜くん」


「ごめん、陽芽。すごく愛しくなって抱きしめたくなっちゃった」


「えへへ、嬉しい。

私の事が好きなんだって分かるから」


「好きだよ、陽芽」


「うん、ありがとう。透夜くん。

私も大好きだよ」


とても心が温かくなった。


俺は、陽芽の事が好きなんだな。


いや、違うな。


毎分毎秒陽芽の事を好きに、恋してるんだと思う。


彼女は、俺の手を両手で握ってきた。


そして、そのまま陽芽は俺にもたれ掛かって来たのだった。


なんだか、その仕草が愛らしくて嬉しくなった。


「ねえ、透夜くん。

また、こうしてハグしてくれる?」


「うん、喜んで」


俺は、その一言が嬉しかった。


また、ハグしていいんだ。

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