第25通目 傍から見れば陰キャカップル

それから、俺たちは進路を変更して歩き始めた。


その進路には、ちょうど通っている高校の前を通る。


まあ、クラスメイトや後輩たちとはあまり仲が良くない。


というよりも良好な関係を築いていない。


だって、俺はぼっちだから。


部活でも、一人黙々と竹刀を振っていた気がする。


「ねえねえ、この先って透夜くんの通ってる高校だよね?」


「うん、そうだよ・・・なんか通りたくないな」


「そうなの?あ、そっか」


「あはは、そうだよね」


陽芽は、気が付いたようだった。


やっぱり分かっちゃうのか。


たぶん、俺たちはお互い以外の人の存在がいらなかったんだな。


だから、交友をしてこなかった。


「俺は、陽芽がいてくれたらいいんだよ」


「えへへ、私も透夜くんがいたらいいよ・・・こんな時期に転校してきたくらいだもん」


そういえば、3年の9月に転校って考えたら友達なんてできても結びつきは少ないだろう。


「あれ?そういえば、陽芽大学は?」


「一応、透夜くんと同じ大学に出願予定だよ」


「そうなんだ、じゃあ受かればキャンパスライフも一緒にいれるね」


「受からなくても私達・・・結婚するからずっと一緒だよ」


「あ、そうだった」


俺たちは、卒業と共に籍を入れるんだった。


昨日初めて聞いたときは驚いたけど、今なら陽芽とずっと一緒に入れるのは凄く嬉しい。


やっぱり、俺はずっと彼女が好きだったんだと自覚できた。


「ぁ?内浦じゃね?」


高校の前まで来たところ、紫色のジャージを来た坊主頭の男に声を掛けられた。


ジャージには、高校の指定ジャージである。


「えっと、誰だっけ?」


「お前なぁ、クラスメートだろうが。

てか、なにお前そんな地味女とデート?

陰キャカップルかよ、笑える」


「あぁ?俺のことは別にいいが陽芽の事を悪く言うんじゃねえよ」


俺の中でスイッチが入った。


目つきが細くなり、視界も同じように狭まる。


「ちょ、怒んなよ。これだから陰キャは」


そういって、彼は逃げ出していく。


俺のスイッチは、元に戻った。


「ありがとう、透夜くん・・・でも、すごく怖かったよ」


「あ、ごめん。部活の時のスイッチが入ったみたいで・・・」


「でも、カッコよかったよ」


よかった、嫌われてなくて。


陽芽の事を悪く言われたのがすごく嫌だったんだ。


「でも、喧嘩はダメだよ・・・透夜くんが怪我するのやだよ」


「ああ、そうだよな。喧嘩はしないよ・・・陽芽のことは守るけどね」


「助けてくれるのは嬉しいけど、無茶はダメだからね」


陽芽は、優しいな。


心配させないようにしないとな。

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