第20通目 眠るまで

結局ベッドは隙間を空けずに並べられていた。


陽芽の細い腕にベッドを動かせる力があったことに少し驚いた。


あれ?と言うことは添い寝するってことかな。


だめだ、ドキドキする。


女の子とこんなに密着することなんて今までなかったからな。


いや、女の子と言うかもう女性だよな。


そして、俺達はベッドの端に座り込んでいた。


「あのさ・・・陽芽」


「えっと、なに透夜くん」


俺は、しっかりいまの「陽芽」に近づかなきゃと思った。


だから、しっかり口にしよう。


それで、この曖昧な関係が明確に崩れても。


「俺、やっぱり10年間・・・ずっと陽芽が好きだったんだ。

改めてしっかり言わせてよ、大好きだよ。陽芽。

今日1日一緒にいて想いが強くなったんだ。」


彼女は、驚いた顔をしていたがみるみる顔を赤くしていった。


でも、これが本心だから。


きっと、しっかり伝えておかないとダメなんだよね。


意気地がないことを理由に想いを伝えないのは違うから。


「えへへ、嬉しい。

私も10年間忘れられなかったの。

ううん、忘れたくなかった。

だから、透夜くん以外の人に相手にされたくなくて地味な格好もしてたの。

今日1日透夜くんと過ごしてわかったの、私も透夜くんが好き。

大好きなの」


俺達は、やっぱり両想いなんだな。


だから、少しだけは近づいてもいいのかもしれない。


「ねえ、透夜くん。

今日は、手繋いで寝てもいい?」


「うん、じゃあ眠るまで」


俺達は、手を繋いでベッドに横になる。


小さくて柔らかな手の感触が右手に感じる。


陽芽を守る力が欲しい。


少しでも身体を鍛えようかな。



透夜くんの手大きいな。


それに、肉刺がいっぱいあってごつごつしてる。


男の子の手だよね。


透夜くんって、部活とかしていたのかな?


中学時代から何かをしていたからこんなに肉刺があるんだろうな。


「ねえ、透夜くんはなにか部活してたの?」


「俺?剣道をしてたんだよ。

でも、弱かったんだ。

続けてはいたんだけど」


「そうなんだね。でも、継続は力なりだよ。

頑張ったんだね。

普段は、とってもおどおどして可愛いのに、覚悟を決めた時の透夜くんはすごくカッコいいの」


恥ずかしいけど、言っちゃった。


でも、透夜くんには私の想いをしっかり伝えなきゃ。


これから、一緒に歩んでいくためにきっと必要なことだと思う。


「そう言う陽芽は?」


「えっと、私は文芸部だったよ。

でも、読み専だったから読んだばっかり」


「そっか、でも陽芽に似合いそうだね。

じゃあ、目が悪くなったのも」


「うん、読書のし過ぎだね。

本の紙の質感も好きだけど、ケータイ小説も好きなの」


「俺も読書は好きだよ」


確かにこの部屋の本棚にもいっぱいラノベが並べられている。


私が読んだことある物もあるけど知らないものもある。


「ねえねえ、透夜くん。

今度読んでもいい?」


「もちろんだよ、自由に読んでよ」


「えへへ、ありがとう」


それから、たわいのない話をして夜は深けていくのだった。


少しずつ心の距離も近づいた気がする。


透夜くん大好き。

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