第16通目 独り占めしたい

俺たちは、ご飯を食べ終わりリビングのソファに座っていた。


でも、その距離は端と端で間には、もう一人くらい座れるくらいの距離があった。


近づきたいのに近づけない。


嫌がられたらどうしよう。


陽芽なら、そんなことはないと思うけどでも怖いな。


まだ、再会して1日すら経ってないんだ。


怖い。お互いに好きなことは分かってる。


でも、10年の歳月はお互いを大人にしてる。


まあ、心はまだ子供なんだろうけど。


悩ましい。



私は、洗い物を終わらせて透夜くんの座っているリビングのソファへと座った。


でも、隣に座って嫌がられたいやだったからソファの端に座った。


やっぱり、恥ずかしいし。


透夜くんに嫌われたら私もう立ち直れないから。


今日は、まだ距離を保ちたいな。


だって、まだ再会して数時間なんだし。


透夜くん、凄くかっこよくなってるからドキドキするよ。


でも、前髪で隠しているのもいいけど・・・。


私は、ヘアピンで透夜くんの前髪を分けてみる。


「ひーちゃん、どうしたの?」


「えっと・・・前髪を分けてるとぉくんカッコよかったから」


そういって、私は彼の前髪をアレンジしていく。



陽芽が、俺の髪で遊んでいる。


だめだ、凄くドキドキする。


でも、いやじゃないな。


俺は、陽芽の眼鏡に手を掛ける。


そして、外してみる。


「え、とぉくん?」


「あー、ひーちゃんの眼鏡外したところ可愛かったから」


陽芽の眼鏡を外した姿は、やっぱりドキドキする。


可愛いな。


「この姿は、俺だけの物にしたいな・・・」


そう俺は呟いていた。



透夜くんの言ったことで私の心臓がさらに高鳴った。


でも、私も・・・。


「私も、いまのとぉくんの素顔は、私だけの物にしたいな」


あ、私も口に出してる。


透夜くんの顔が見る見る赤くなった。


私達は、同じ気持ちなんだと思った。



俺たちは、同じ気持ちなんだな。


じゃあ、そうだな。


「ひーちゃん、俺さ。家の中では前髪あげていようかと思うんだけど」


「うん、私だけとぉくんの素顔を見せてくれるんだね。

えへへ、うれしい」


そういって、満面の笑みを浮かべる陽芽。


ドキっと心臓が高鳴った。


可愛い、この笑顔が好きだ。



えへへ、透夜くんがそんな風に考えてくれているなんて嬉しい。


私は・・・。


「とぉくん、私も・・・とぉくんにだけ眼鏡の無い私を見てもらいたいから。

お家ではなしでいようかな・・・でも、目が悪いからずっとなしは無理かもだけど」


そう、私は目が悪い。


だから、眼鏡かコンタクトがないとダメなんだよね。


でも、透夜くんの前では私も素顔でいたいな。


「無理がないレベルでいいよ。

でも、誰にも素顔を見せたくないな」


嬉しい。


私も、透夜くんにだけ見ててもらいたい。


だって、私が好きなのは透夜くんなんだから。

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