第14通目 お互いを知る

俺は、風呂掃除と風呂の準備を終わらせてダイニングへと戻ってきた。


「え!」


陽芽が俺の顔を見てそう呟いていた。


そういえば、風呂掃除をしていたら前髪が鬱陶しくなって髪を上げていたな。


顔が見えてるからなのかな?


なぜか、凄く陽芽の視線が俺の顔に向いている。


「えっと、どうしたの?ひーちゃん」


「えっと・・・ね、かっこいいなって・・・思って」


そう言うと、陽芽は俺から視線を外した。


でも、その顔は真っ赤になっていた。


「ありがとう・・・ひーちゃんも。か、かわいいよ」


そう言った俺も結局陽芽の事を見ることができなくて視線を外した。


顔が熱い、耳まで熱い気がする。


「えへへ、ありがとう」


陽芽は、そう言いながらキッチンから出てきた。


ダイニングテーブルの上には料理が並んでいた。


凄い美味しそう。


陽芽ってこんなに料理ができるんだ。


「とぉくん、ちょっと座って待てて」


そういって、陽芽はダイニングを出ていった。



私は、恥ずかしさでダイニングを出てきた。


もぅ、透夜くんは狡いです。


やっぱり、前髪で見えなかっただけでとってもカッコよかった。


他の誰にも見せたくないなぁ。


私だけの透夜くんでいて欲しいなぁ。


なんてね。


私は、洗面所へ向かった。


透夜くんが戻ってくる少し前に旅行バッグの中に入れていた眼鏡とコンタクトケースをポケットに入れていた。


私は、洗面所でコンタクトを外し、眼鏡を掛ける。


鏡に映る私は、黒縁の眼鏡を掛けただけの私。


普段の私は、ヘアピンもしていなくて前髪で視線を隠してる。


後ろ髪もいつもは三つ編みを二本で結んでる。


いまは、ストレートで腰くらいまでの長さになってる。


我ながらダサ眼鏡。


もしかしたら、透夜くんも同じように思ってくれるかなぁ。



しばらくして、陽芽が戻ってきた。


「あれ?眼鏡」


「変かな?」


「印象が変わるね、でもひーちゃんはひーちゃんだよ」


「えへへ、ありがとう」


そっか、これが学校での陽芽か。


これなら安心だ。


さっきまでの陽芽だと心配になってしまう。


俺はたぶん、彼女を独り占めしたいんだろうな。


俺だけの陽芽に。

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