第12通目 同じ歩幅で同じ道程を
夜の街を俺たちは二人歩いていた。
お互いにエコバッグの手提げを持っていた。
傍から見ると子供と手を繋いでるように見えるかもしれない。
「ねえ、透夜くん」
「なに?陽芽」
「なんだか、子供と手を繋いでいるみたいな影が」
街灯の下、照らされた影が確かにそう映って見えた。
俺たちは、やっぱり同じことを考えていたみたいだ。
「俺も、同じことを考えてたんだ」
「えへへ、いつか・・・」
「俺たちの子供と・・・」
そうお互いに呟いてごもってしまう。
急に恥ずかしくなってきた。
顔が熱い。
それに、心臓の音がうるさい。
なかなか、陽芽の顔を見れない。
彼女も、ちらちらとこちらに視線が向けて来てくれている気がした。
今は、こうしてエコバッグ越しでしか手を繋げないけどいつかはしっかり手を繋ぎたいな。
◇
ずっと、心臓の音がうるさい。
透夜くんの顔が見れないよ。
私の心臓の音、彼に聞こえてないよね?
透夜くんの横顔を見るとすぐに心臓が高鳴る。
顔が熱い。
透夜くんの横顔・・・すごくカッコいい。
もちろん、正面からだってカッコいい。
私と同じで長い前髪は、きっと人と視線を合わせないためなんだろうなぁ。
視線って怖い。
それが、どんな視線でも。
きっと、透夜くんも私と同じような時間を歩んできたのかもしれない。
◇
陽芽の横顔を見ていると胸の高鳴りがする。
すっかり可愛くなった彼女。
前髪を右目側に流すようにヘアピンをしている。
だから、俺がいる左からはちらちらと瞳が見れる。
ときどき視線が交わる。
すると、すぐにお互い視線を逸らす。
やがて、俺たちは視線を落として家路を歩んでいた。
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