第11通目 お買い物と言う名のデート
俺たちは、家から出てスーパーへと向かっていた。
肩が触れる距離で隣り合わせに歩いている。
陽芽の手を見てしまう。
昔は、よく手を繋いで歩いていたな。
でも、10年も経つとなかなか繋げない。
気恥ずかしさが勝ってしまう。
陰キャな俺には、積極的に女の子と手を繋ぐなんて無理だな。
「えへへ、なんだか恥ずかしいね」
「女の子とこうして歩くの久し振りすぎて」
「私も・・・ずっとね、とぉくんと歩いてたあの頃だけだよ。
男の子と歩くの」
陽芽は、俯きながら歩いていた。
俺たちは、どこか似ているのかもしれない。
「ホントはね、学校では眼鏡だしお下げなの。
今日は、とぉくんに会えるからがんばってみたの」
そんなことを言ってもらえるととても嬉しい。
そっか、いつもは地味目なんだな。
でもよかった。
・・・よかったって。
やっぱり、俺は陽芽の事が好きなんだな。
◇
私は、透夜くんの手を握りたいけど握れずにいる。
手がぶつかることはあるけど、嫌がられたらどうしよって思って握れないでいる。
透夜くんは、どう思ってるんだろう。
私は、彼の顔をじっと見つめてしまう。
私の視線に気づいて、透夜くんがこっちを向く。
でも、恥ずかしくなって視線をずらしてしまう。
私は、実は透夜くんと離れ離れになったあの日から友達ができなかった。
学校ではいつも読書をしたりしてた。
目が悪くて眼鏡をしてたし、前髪も長くしていた。
後ろ髪もお下げにして。
所謂、陰キャと言われるから。
でも、透夜くんも同じタイプだったのは嬉しかった。
だって、透夜くんはしっかり身だしなみを整えるととってもカッコいいから。
やっぱり、この10年。
私は、透夜くんのことが変わらず好きなんだって気付かされた。
こうして、肩を並べて歩けるのは凄く嬉しい。
◇
俺たちは、近所のスーパーへとやってきた。
24時間営業のスーパーなのでよく深夜にきてたりする。
深夜だと値引きになるから。
「とぉく・・・透夜くん」
「ひーちゃ・・・陽芽?」
「なんだか、急に名前にすると恥ずかしいけど。
外で愛称は・・・」
「まあね。でも、普段からも陽芽って呼んでいい?」
「うん、じゃあ私も透夜くんにするね」
お互いに頬を赤らめていた。
名前で呼び合うのは、少し照れくさい。
陽芽の顔を直視できない。
彼女も俺のことをちらちら見ている気がする。
◇
とぉくん・・・透夜くんと呼ぶようにしてから。
心臓が、鼓動が早くなってる。
顔を直視できないよ。
すごく恥ずかしい。
でも、これからずっと透夜くんと居られるんだから慣れていかなきゃ。
今日は、彼の誕生日だからしっかりお祝いしてあげたいな。
透夜くんっていまはどんなものが好きなんだろう?
昔は、ハンバーグとか唐揚げとか子供っぽいものが・・・10年前だと子供だった、私達。
◇
「透夜くんは、好きな食べ物って何?」
ショッピングカートを押しながら、陽芽が尋ねてくる。
でも、俺の方を見てこない。
俺自体もいまは彼女とは視線を合わせられそうにないからちょうどいいのかも。
それにしても、俺の好きな物か。
「カレーとか唐揚げとか」
「もぅ、変わってないなぁ」
「あはは、子供っぽいよね」
「でも、変わってなくて安心しちゃった。
私の得意料理だから期待しててね」
得意料理。
そっか、陽芽の手料理が食べれるんだ。
嬉しいな。
俺たちは、その後買い物をして家路に着くのだった。
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