第9通目 頭と気持ちの整理が追い付かない

「えっと、どういうこと?お母さん」


「陽芽の荷物は、明日透夜君のとこに届くからね」


あ~、何言ってもダメな奴だな。


俺たちは、一緒に住む。


これだけは、まずは決定事項なんだろう。


「透夜、仕送りはいままで通り送るから。

充分な分は送ってたから大丈夫でしょ」


「まあ、副職もうまくいってるから多分大丈夫」


俺は、内職とも呼べる仕事を少ししている。


お小遣い程度の稼ぎにはなってきている。


だから、生活費を出してもらえているならなんとか嗜好に走っても大丈夫だろう。


それに、春から一人暮らしをして最低限の出費だけにしているのでそこそこ貯金もある。


まあ、ぼっちな俺が遊びにお金を使う必要はないから。


特に、趣味もないからな。


「あ、そうだ。本題を忘れてた」


俺は、スマホに映る2人にもう一つの「誕生日プレゼント」を見せる。


「ひーちゃんからの誕生日プレゼントなんだけどさ」


そこには、俺の名前も陽芽の名前も記入されてる。


「「あらあら」」


2人の声がシンクロする。


まあ、仕方ないよね。


「今度そっちに行ったら記入するわね」


「私も一度そっちに行くわね・・・そうだ、月渚ちゃん」


「あ、そうね」


何か二人で納得していた。


ろくでもないことなのはわかった。


やがて、2人にはそのまま通話を切られた。


そして、俺たちの間には長い長い静寂が訪れる。


陽芽も自身の婚姻届が誕生日プレゼントだと思って行動していたのに。


自分自身がまさか誕生日プレゼントにされていたとは思いもよらなかっただろう。


そしてなにより昔から俺たちが許嫁だったこと。


現状を見れば、婚約者と言うのが正しいのかもしれない。


内定している結婚生活の前哨戦をしろということなんだろうな。


頭は整理できたけれど、気持ちがまだ整理できてないな。

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