第8通目 知らぬは子供ばかり
「あれ?透夜」
スマホから母親の声が聞こえてきた。
先程、コールをしていたところ少しして応答があった。
「母さん、久し振り」
「ああ、そういえば誕生日プレゼントは届いた?」
「え?母さんからは来てないと思うけど」
「私からと言うか、天宮さんとこから」
そう言われた直後、俺は陽芽を見る。
彼女も、自分自身を指差して首を傾げていた。
「・・・なんとなくわかった。ちょっとビデオ通話にするよ」
そういって、画角に陽芽と二人で映るようなアングルにセットする。
そして、向こうの姿も見える。
スマホには、黒髪で後ろ髪を青い大きなリボンで結んだ女性が映し出されていた。
「あら、届いてるじゃない」
「えっと、ひーちゃんのこと?」
「そうよ・・・だって、貴方達ずっと前から許婚じゃない」
いやいや、知らないし。
なにそれ。
聞いたことないんだけど。
俺は、陽芽の事を見た。
でも、彼女も首を振る。
「あの・・・とぉくん。私もちょっと連絡してみていい?」
「あ、うん」
なんか、話が大きくなってきたんだけど。
もしかして、陽芽が今日来たのも計算されていたとか。
「あ、こっちも繋がりました」
「陽芽、着いたの?あら、透夜くん。
まあまあ、随分と男前になって」
「どうもお久し振りです」
陽芽のスマホには、黒髪で後ろ髪を赤い大きなリボンで結んだ女性が映し出されていた。
ん?なんだ。この既視感は。
それぞれのスマホを見やる。
「ねえ、ひーちゃん」
「う、うん。とぉくん」
「ひーちゃんのお母さんのリボン」
「とぉくんのお母さんのリボン」
お互いにお互いのスマホを指差していた。
たぶん、同じことを思ったのだろう。
「あら、灯里ちゃん?」とお袋。
「まあまあ、月渚ちゃん」と陽芽のお母さん。
なんとなくは分かってたが、この二人親友かなんかだな。
ちょっと呆れてきた。
「灯里ちゃん、さっきね。許婚って伝えたよ」
「月渚ちゃん。じゃあ次は私の番ね。
陽芽、貴女はこれから透夜君と一緒に暮らしなさい」
そう告げられた。
これは、うん。
外堀まで埋まりきってる奴だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます