第6通目 一人暮らし同士なんだから

「とぉくん・・・透夜くん。

私もずっと好きだったの。

離れ離れになっても。

だから、こちらこそよろしくお願いします」


そして、僕に飛びついてきた陽芽。


こうやって甘えてくるのが彼女なんだろうと割り切ることにした。


「とりあえず、ひーちゃん。

中に入ってよ」


「うん、えへへ。

お邪魔します・・・あれ?おじさんとおばさんは?」


「あ!そうだった。

今年の春から俺、一人暮らししてるんだ。

お袋は、親父の転勤に付いていったんだよ」


「そうなんだ・・・実はね、私も独り暮らしなの」


あれ?隣の家のはずだよな。


確かに、ずっと空き家状態だったけど。


「私、一人で帰って来たの。

家は、元々家族の持ち家だったから」


「そうだったんだ・・・一人暮らしの家だと上がりづらいかな?」


「そんなことないよ、お邪魔します」


意を決したような顔つきで陽芽は、靴を脱ぎ上がった。


ちょっと意地悪しちゃったかな。


・・・あ、やばい。


なんにも片づけてない。


「とぉくん」


「はい・・・」


「昔から片付け苦手だったね、ふふふ。

変わらないね」


陽芽は、どこか嬉しそうだった。


そんなに変わらないところがあったのがうれしかったのだろうか。


「とぉくん、ちょっと片付けしちゃうね」


そういって、片付けを始める彼女。


俺も、そうして片付けする陽芽を見て過去の彼女の面影が重なる。


「ひーちゃんも変わってないね」


ああ、こういうことか。


たしかに、なんだか嬉しい。


知らない顔見知り、ではなくずっと知っている幼馴染みで好きな人だったから。


新しい陽芽を知って、いままでの・・・過去の君を思い出して。


「ねぇ、とぉくん。あのね」


「ん?どうかした?」


「いつもご飯はどうしてるの?」


「外食が多いけど」


「ダメだよ、そんなの」


俺は、陽芽に怒られた。


でもさ、料理できないんだよな。


生活費として、多めにお金は振り込まれている。


だから、毎食外食をしている。


「とぉくん。私がお世話してもいい?」


「え、いいの?」


「だって、その方がとぉくんとずっと一緒にいられるもん」


なるほど、俺と一緒にいたいからか。


うん、その理由なら俺も決まってる。


「俺もひーちゃんとずっといたいから。

お願いします」


「えへへ、ありがとう」


「ううん、こちらこそありがとう」


そうして、俺たちの変わった生活が始まった。

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