第5通目 面影が重なる
「とぉくん・・・私からの誕生日プレゼント届いた?」
「誕生日・・・プレゼント?もしかして、婚姻届?」
「えへへ」
陽芽は、笑みを浮かべていた。
笑顔・・・あれ?なんだろう。
何か思い出しそう。
そう、確か10年前・・・。
◇
「とぉくん、わたし。とぉくんとバイバイしたくない」
大粒の涙を流しながら俺・・・僕の腕にしがみつく陽芽。
幼い頃の陽芽。
「じゃあ、ぼくたちがけっこん?したらはなればなれにならないかも」
「けっこん?する、とぉくんとする」
「でも、おとなにならないとだめなんだよ」
陽芽が、唇を尖らせる。
「うー」と唸っていた。
「じゃあ、おとなになったらする。
とぉくん、ゆびきり」
「うん、おとなになったらしようね」
僕らは、小指を絡ませる。
そして、指切りをするのだった。
陽芽は、満面の笑みを浮かべていた。
◇
そうだった。
思い出した。
さよならしたあの日から10年。
そして、あの日と同じ俺の誕生日。
陽芽は、先月8月に18歳になっている。
お互い、成人・・・大人になったんだな。
「約束・・・だったね」
「うん、10年ずっと会えるの待ってたの。
だから、私と結婚しよ」
「ごめんね・・・」
陽芽が、大粒の涙を零す。
俺の胸が、ズキンと痛む。
「違う、ひーちゃん。
そうじゃないよ。
俺も、ひーちゃんと結婚したいけど・・・まずは、恋人にさ。
なろうよ。
俺たち、高校生なんだから」
成人したと言っても、俺たちはまだ結婚できない。
それに、俺はコミュ症・・・せめて、陽芽の前ではしっかりしたい。
だから、リハビリさせてほしい。
「うー」
「はぁー、ひーちゃん・・・陽芽!」
「ひゃい」
彼女が変な声を出す。
なんか可愛いな。
「10年前・・・いや、それ以前からずっと好きなんだ。
だからさ、結婚を前提にさ・・・つ、付き合ってほしい」
俺は、徐々にキョドっていく。
でも、伝えたい言葉はしっかり伝えられた。
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