第5通目 面影が重なる

「とぉくん・・・私からの誕生日プレゼント届いた?」


「誕生日・・・プレゼント?もしかして、婚姻届?」


「えへへ」


陽芽は、笑みを浮かべていた。


笑顔・・・あれ?なんだろう。


何か思い出しそう。


そう、確か10年前・・・。



「とぉくん、わたし。とぉくんとバイバイしたくない」


大粒の涙を流しながら俺・・・僕の腕にしがみつく陽芽。


幼い頃の陽芽。


「じゃあ、ぼくたちがけっこん?したらはなればなれにならないかも」


「けっこん?する、とぉくんとする」


「でも、おとなにならないとだめなんだよ」


陽芽が、唇を尖らせる。


「うー」と唸っていた。


「じゃあ、おとなになったらする。

とぉくん、ゆびきり」


「うん、おとなになったらしようね」


僕らは、小指を絡ませる。


そして、指切りをするのだった。


陽芽は、満面の笑みを浮かべていた。



そうだった。


思い出した。


さよならしたあの日から10年。


そして、あの日と同じ俺の誕生日。


陽芽は、先月8月に18歳になっている。


お互い、成人・・・大人になったんだな。


「約束・・・だったね」


「うん、10年ずっと会えるの待ってたの。

だから、私と結婚しよ」


「ごめんね・・・」


陽芽が、大粒の涙を零す。


俺の胸が、ズキンと痛む。


「違う、ひーちゃん。

そうじゃないよ。

俺も、ひーちゃんと結婚したいけど・・・まずは、恋人にさ。

なろうよ。

俺たち、高校生なんだから」


成人したと言っても、俺たちはまだ結婚できない。


それに、俺はコミュ症・・・せめて、陽芽の前ではしっかりしたい。


だから、リハビリさせてほしい。


「うー」


「はぁー、ひーちゃん・・・陽芽!」


「ひゃい」


彼女が変な声を出す。


なんか可愛いな。


「10年前・・・いや、それ以前からずっと好きなんだ。

だからさ、結婚を前提にさ・・・つ、付き合ってほしい」


俺は、徐々にキョドっていく。


でも、伝えたい言葉はしっかり伝えられた。

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