第4通目 ずっと好きだったみたいだ

う、意識したらドキドキしてきた。


甘くていい匂いがする。


む、胸が当たってる。


柔らかい・・・。


「ひーちゃん、そろそろ離して」


俺の顔は赤くなってるだろう。


玄関先で俺は何をしているんだろう。


俺は、彼女以外で女の子の知り合いはいない。


だから、免疫がない。


・・・彼女いない歴=年齢。


そして、こうして女の子と『普通』に話すのも10年振り。


いや、女の子どころか人と話すのも久し振りなのかもしれない。


「はなす?どこから話そうか?」


「ち、違う。その『はなす』じゃない」


「あ、ごめんね。会えたのが嬉しくて」


そういって、陽芽は俺を解放した。


彼女の姿が、やっとしっかり見えた気がした。


10年前は、まだまだ子供だったのにすっかり大人になっている。


あと、半年もしたら俺たちは進路次第では大学生になる。


「ホントはね、もっと早くに戻ってきたかったの。

でも、夏休みも過ぎちゃって。

とぉくんの誕生日になっちゃった。

えへへ、とぉくん。お誕生日おめでとう」


「・・・ありがとう、ひーちゃん」


誕生日を祝うために来たわけじゃないよな。


だって、婚姻届。


住所だって。


「また、お隣さんになったの。

だから、またよろしくね」


「う、うん・・・よろしくね。ひーちゃん」


だめだ、俺はいまでも『陽芽が好き』なんだ。


彼女を見てると胸が高鳴る。


頬が、赤くなる。


抱きしめたくなる。


俺は、10年会えなくてもずっと好きだったみたいだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る