21話 クリスマス。


クリスマスの夜。ということもあって色んなところに色々なサイズのクリスマス

ツリーが飾ってある。こっちに来て初めての冬だがこのイルミネーションの量を

見て改めて東京の凄さを感じた。



東京に来る前は神奈川の湘南地域に住んでいたためそれなりに都会と思っていた。

だがここ半年以上でその感覚がだいぶ変わった気がする。冬は特にそう感じた。

湘南が少しだけ田舎なのではないかと思った。



しばらく歩き約束している場所についた。集合時間の15分前についてしまった。

俺のほうが先についたと思ったが集合場所にはもう夢愛がいた。



「ごめん!待った?」



「全然待ってないよ!」



おそらく待たせたのに悪い顔一つしない。そういう所にも惚れたのだろう。



そして夢愛が予約しておいてくれたらしいレストランに向かった。

高校生でも気軽に入れる雰囲気とは言っていた。



あたりを見渡すとほとんどカップルしかいない。自分もそういう目で見られるのかと考えたら少し恥ずかしくなった。周りからはどう見えているのだろう。

夢愛の横を歩くのにふさわしい人になれているのか。勝手に自己嫌悪感に襲われる。



日常的な会話をしながら歩いているとあっという間にレストランについた。

レストランには色々な年代のカップルで溢れていた。

学生っぽい人達が見えたときに一気に緊張が解けたような気がした。



そこからは色々な料理を楽しんだ。



ただ食事をするだけがこんなに楽しかっただろうか。普通の会話をしているだけ

なのにこんなにも幸せになれるのだろうか。空太との会話ではこんな気持になった

ことは絶対にない。自分にとって夢愛という人物がどれほどの大きさかがわかった。



食事は終わり店を出た。



あとは大きいツリーのある道を散歩して解散という形になっている。

でも本当にこれでいいのだろうかこの気持ちをずっと引きずるのか。

きっと良くはないだろうが全く勇気が出ない。本当に何もかも情けない。



「きれいだね。」



「そうだね。」



なにが「そうだね。」だ。もっと他に言うことがあるだろ。



そしてツリーの前まで来てしまった。



時間は止まってくれないと酷く実感した。



もうとりあえず今日は帰らないと、この自己嫌悪を直しからじゃないと告白なんて

できない。この調子じゃ夢愛にまでなにか言ってしまいそうで怖くなってきた。



もう帰ろうか。その言葉を言おうとした時。



夢愛は俺の胸に飛びついてきた。



夢愛の身体はとても小さく細く柔らかく優しい匂いがする。

強く抱きしめてしまったら折れてしまいそうなぐらいに。



心臓がバクバクする。恐らく夢愛には聞こえている。でもなんで急にハグなんか。

頭の中はもういっぱいいっぱいになっている。



夢愛は俺の手を掴み自分の背中に当てた。俺はそのまま夢愛を優しく包み込んだ。



俺らは無言のままでいた。



このままずっとこうしていたい。これ以上にない幸せな時間だった。



もう「付き合おう。」という言葉が口からでそうだった。



「蒼介。」



優しい声でそう呼ばれた。



「どうした?」



俺は優しく言葉を返した。



「昔から。小学生から。ずっとずっと好きだった。付き合ってほしいです。」



昔から。



俺が想像した発言とは少々違うワードが夢愛の口から飛び出した。



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