11話 逃げ道。

「いやお前どこまでついてくるの?」



「まぁまぁそんなこというなよ」



同じ秋葉原駅で降りた。このときもまだ俺らは気づいてなかった。いや俺だけだ。

少し歩いてもうすぐつく所まで来た。近づくにつれどんどん鼓動が速くなる。



「空太は俺とバンドやりたくてこっち来たのになんで違うバンドに入ってるの?」



「え?なーにいってんの同じところだよ?」



「え?は?じゃあなんで昨日俺がどこでやってるか聞いたの?」



「俺が面接したところと合ってるか確認したかっただけだよ笑」


びっくりして速くなっていた鼓動がもっと速くなった。

ここ数日でびっくりしたことが多すぎる。もうそろそろキャパオーバーしそう。

でもよく考えれば当たり前だけど...。今更自分の鈍感さに気づいた。



なんだか頭の中が真っ白になりつつあったが気づいたら夢愛たちの家についていた。

家の前についたときの俺の心臓は飛び出るんじゃないかと思うくらいにバクバクしていた。空太がドアノブに手をかけようとした時に待ってと言おうとしたが勇気が出なかった。考えるほど気まずさが増すがここにきて引くに引けないから行くしかない。



1歩踏み出し中に入った。緊張はする。でもこういうことからもう逃げたくはない。

高校もそうだった。自分で蒔いた種を育てずに放置。自分でもダサいとしか思わないでも逃げ道ばかり考えてしまう。そんな自分が嫌いになりそう。

もう気まずさは捨てないとこれからもやっていけない。まだ1回しか集まっていないのにこれじゃあせっかくまた始めようと思ったのに意味がない。



「あ、瑠衣蒼介たち来たよ」



「あれ俺らが一緒にいてびっくりしないの?」



「あぁ俺が面接の時に言った笑」



こいつすごいなもし俺がここに入ってなかったらただの変人じゃん。

空太は昔もそんな感じだった気がする。誰とでも仲良くできるような。

まぁ覚えていないけど笑。まぁ全く笑えないのだけど。



「はい!今日はなにをしますか!」



相変わらず元気な人だなこの人。声でかくて脳に響くし。



「夢愛ちゃんたちが決めていいよー」



「じゃあうちのベース買いに行こうよ!この前行けなかったし」



そうして俺らはベースを買いに家を出た。


駅の近くの店に行くらしい。がやがやした街を歩く。その間も夢愛、瑠衣、空太は

出会ってそんなに経っていないのに仲良く話してる冗談抜きで空太は尊敬する。

3人の背中は大きく見えた。俺だけ一言も話さずに店についた。



「わぁすごー!いっぱいある!!」



中は広めで独特の匂いがする。3人はテンションが上がっているが俺は未だに

気まずさMAX。笑 いや本当に笑えない。この状況が続くなら多分精神的にも

長く持たない。早く状況を変えないととは思うが上手く行動できない。

でも俺がお金貸すんだっけ。まぁ瑠衣は気まずくないからいいか。



「瑠衣どれ買うの?俺が払うんだから値段考えてね笑」



「どれ買おうかなぁ あ、2階もあるじゃんそっけ行こ!夢愛2階行ってるねー」



「わかったー」



空太と夢愛は1階で別の楽器を見ているから俺と瑠衣は2階に行くことにした。



「ねぇそっけ!なんでさっきからそんなにテンション低いのさ!」



「そうかな。そんなことないよ笑」



「そっかぁならいいけどなんかあるなら言ってね?」



言えるはずないだろ。まだ出会って間もないのにそんな事言えないよ。

自分でも何もわからないんだから。



「あ、これがいい!これどうかな?!」



「いいんじゃない?」


瑠衣が選んだベースは真っ黒より真っ黒。そのぐらい深い黒だ。

値段は5万円見た目は高そうだが案外安かった。5万円ぐらいなら貯金でなんとか

なるレベルだから良かった。高校生にしてはお金は持っている方だからな。





そうして無事ベースを買い夢愛達の家に戻った。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る