7話 ため息。

その瞬間頭が真っ白になった。なにを言っているのか理解できなかった。

何も考えられなかった。言葉もうまく出ない。俺が昔夢愛と...?会ってたのか...?

7年前って俺がバンドしてた時?辰巳夢愛...?何だ?なんのことだ?

自分の心の中で答えのわからない自問自答を何度も繰り返した。



まずい。なにか喋んないと。何か口に出せ。なにか...。なに...か。喋んない。と。



「ごめん私の勘違いかも。今の忘れて!ごめんね急に変なこと言っちゃって!」

やっぱり私の勘違いなのかな...?やばい蒼介困ってる。どうしよう。


「じゃあ私戻るね!ばいばい蒼介!!」



そう言って夢愛は足早にアパートの中に戻っていった。俺は何も言えなかった。

ただただ呆然としているだけだった。俺はどんな顔をしていたんだろう。

夢愛が嫌がるような顔してたかな。あぁ俺はなにをしているんだろう。

不安に襲われた。今後夢愛達とやっていけるのだろうか。



「考えるだけ無駄だ。もう帰ろう。」



駅まで歩く時間。 電車に乗っている時間。 家まで歩いている時間。

7年前辰巳夢愛という女と会っていたのか?昔の俺はなにをしていたのだろうか。

必死に考えた。何度も自問自答を繰り返した。でもその問の答えは出なかった。



何なんだろうこの感覚、胸が苦しい。胸の奥がキュッと締まるような感覚だ。

そんな答えの出ない問を繰りかえしていたらあっという間に家についた気がした。



家の中に入った瞬間に玄関で膝から崩れ落ちた。



「はぁぁぁぁぁ何してんだかほんとに。」



15年しか生きていないが人生で1番深いため息をついた。



「あれ雨漏りしてるのか?でも雨なんか降ってなかったよな。」



その時に気づいた。自分が泣いていることに。ぽろぽろと涙が床に落ちていく。

あぁどんどん肩の力が抜けていく。重荷をおろした感覚。



「なんで俺は泣いてるんだろう。あぁもうむしゃくしゃする!」



とりあえずスッキリしようとお風呂に入った。お風呂に入っている間も

どこか頭の片隅で答えが出ない自問自答を繰り返し続けた。



「もう寝よ。」



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「ねえ瑠衣?」



「どしたー?」



「蒼介にね私達って昔どこかで会ってた?」的なこと聞いたみたんだよね...」



「え。まじめっちゃ急じゃん。それでそれで?どうだったの?」



「それが、そのこと言った瞬間蒼介その場で固まっちゃって。」



「えぇなんじゃそれ。はっきりしてないじゃん!」



「うーんそうなんだよねー。4日後会うの気まずい。」



「じゃあとりあえず連絡してみる?」



「いや、いいよ。面接だし。1人じゃ心細いし?」



「じゃあ4日後まで待ってみようか。」










俺は4日後の面接に行かなかった。





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