第三章:キカイン・ゲンテの街
第18話:今回のお恵みは
「ここがキカイン・ゲンテの街ですか。ミン・ナクルより海が近いのですね」
『潮風が気持ちいいフェン』
⦅いつもより海が輝いて見える⦆
⦅この世界に入りたい⦆
⦅君はお呼びじゃないよ⦆
エルマーナさんたちと別れて数週間後、私たちはキカイン・ゲンテの街に到着しました。
今は街の前にある小さな丘に立っています。
海辺が近い港街のようで、どこにいても潮の香りが漂っていました。
「ルーリンさん、さっそくですがダンジョンに行きましょう」
『そうフェンね。きっと、みんなフレイヤを待っているフェンよ』
二人で歩きだしたときでした。
目の前の空が金色に輝きだし、頭の中にお言葉が響いたのです。
〔チャンネル登録者が30万人に達しました。おめでとうございます!〕
こ、これは……!
神様のお言葉……!
すかさず跪いて祈りを捧げます。
『フ、フレイヤ、どうしたフェンか? 急に祈り出して……』
【ライブ配信】のスキルを授かってから、私はあることに気づいていました。
普段お話くださる神様と、この神様は違う神様なのだと。
天界にお住まいの神々と通じ合える貴重なスキルとともに過ごしているうちに、私はそのような結論に至っておりました。
「神様! 私は神様のおかげで幸せに過ごせております!」
『え……フ、フレイヤ、本当にどうしたフェン? 様子がおかしいフェン』
「神様がお見えになっているんです!」
『か、神様……フェンか?』
「ほらっ! あそこです!」
彼方には金色に光り輝く空。
手を伸ばせば届きそうなのに、届かないのがもどかしいです。
『ぼ、僕には何も見えないフェン……』
「ああ、神様。またお言葉がいただけるとは、私は本当に幸せ者でございます」
〔それでは、チャンネル登録ボーナスを受け取ってください! 30万人までのボーナスをまとめてお送りします!〕
『うわぁっ! 空から何か降ってきたフェン!』
あの日と同じように、お言葉の後に空がぱああっ! と光り、数々のお恵みが降ってきました。
◆――――――――◆
【アーティファクトの粉】@チャンネル登録者200000人達成ボーナス。
・アイテム分類:分類不明
・ランク:SS
・効果
〔使用すると、ゴーレムなどの自律型アーティファクトが誕生する〕
・説明:太古の錬金術師が調合したとされる粉。生み出したアーティファクトは、敵を攻撃したり素材を運ぶなど使い方は無限大。
【神の剣“シンギツル”】@チャンネル登録者300000人達成ボーナス。
・アイテム分類:武器
・ランク:SS
・効果
〔物理攻撃力を+7777する〕
〔一度の攻撃で7連撃する(一度に物理攻撃力の7倍のダメージを与える)〕
・説明:この世界が始まるときに創られた神剣。神々の力が宿っているとされ、剣術の心得がない者が持っても自動で敵を倒してしまう
◆――――――――◆
アイテムの山を見て、ルーリンさんは唖然とした様子です。
『ビ、ビックリしたフェン。それにしても、こんなアイテム見たことないフェンね』
「これが神様のお恵みなのです」
『お恵み……神様ってすごいフェン……!』
ルーリンさんは感銘を受けたように跳ね上がります。
もちろん、お恵みも嬉しいですが、ルーリンさんにも神様の素晴らしさが伝わって何よりですね。
〔チャンネル登録者ボーナスによって、今回もステータスがアップデートされました。どうぞご確認ください〕
「はい、わかりました! 神様、ありがとうございます! すてーたすオープン!」
◆――――――――◆
〇ステータス
・名前:フレイヤ
・レベル:1
・職業:“信心深い”見習い聖女
・HP:15893/15893
・MP:17230/17230
・スタミナ:7452/7452
・物理攻撃力:6098
・物理防御力:4743(×777)
・魔法攻撃力:7002(×777)
・魔法防御力:6981(×777)
・素早さ:16977
〇装備など
・武器
①【護身用スタンガン・極(777万V)】
・防具
①【“信心深い”見習い聖女さんの服】
〇称号
・チャンネル登録者30万人
・フェンリルの救い手
・幼女の救い手
〇実績
〔メインクエスト〕
・無し
〔サブクエスト〕
・迷いフェンリルを助ける
・幼女の姉を探す
◆――――――――◆
『す、すごい数字だフェン……』
知らないうちに実績も増えてました。
これが何を意味するのかまだわかりませんが、人助けの証みたいで嬉しいです。
やがて、空の光は消えてしまいました。
今回のお言葉はここまでのようです。
そういえば、神様は先ほど登録者が30万人になったと仰っていましたね。
ということは、30万人のもの神様が私を応援してくださるということ……。
「なんと素晴らしい……」
思わず愉悦の声が漏れ出てしまいます。
何はともあれ……。
「まずは街へ行きましょうか、ルーリンさん」
『こんなに強かったら、どこに行っても敵なしだフェンね』
元気よく踏み出すと、いつもの神様たちのお話も聞こえてきました。
⦅おっ、配信やってるな……って、ステータスどうしたw⦆
⦅ちょっと目を離した隙に、フレイヤたんがとんでもないことに⦆
⦅今度はどんな無双が見られるのか⦆
神様たちのお言葉を胸に街の中を進みます。
少し歩くと大きな広場に出てきました。
中央には噴水があり、そこかしこに屋台が並んでいます。
食べ物やお菓子を売るお店、簡易的な鍛冶屋、怪しい占いをしているようなお店など、たくさんの屋台でした。
住民の憩いの場でもあるのか、老若男女の人たちで賑わっていました。
「とても活気があります。今日は何かのお祭りがあるのでしょうか」
『どうやら、毎週末に市場が開かれているみたいフェンよ。ほら、あそこに書いてあるフェン』
「あんな遠くの看板に……? ルーリンさんは目が良いですね」
『まぁ、これでもフェンリルだからフェンね』
ルーリンさんが指していたのは、広場の隅っこにある掲示板です。
近寄ってみると、確かにそう書いてありました。
「ふむ。ダンジョンにモンスターが大量発生していると聞いてきましたが、日常生活にはそれほど影響がないんでしょうか」
『たしかに、もっと慌ただしいかと思っていたフェン』
「とりあえずは情報を集めた方が良さそうですね」
さて、と周りを見回しましたが、どこのお店もお客さんでいっぱいで、すぐにはお話できそうな雰囲気ではありません。
う~ん、どうしましょうか。
せめてこの辺りの地図でもあればいいのですが……。
ふと横を見ると、少年が地面に座ってアイテムをいくつか売っていました。
誰もお客さんはいないようです。
あの少年にダンジョンがどこにあるのか聞いてみましょう。
「すみません、私はフレイヤと申しますが、この辺りにダンジョンは……」
「おい、ヨーネ。“クリエーサの秘薬”は入手できたのかぁ? まぁ、お前みたいなザコモブには無理だろうがなぁ」
少年に話しかけようとしたら、私の後ろから野太い男性の声が被さってきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます