■ EX24 ■ 閑話:魔王国民ゲイルとクリス Ⅳ
そうして、アイズとケイルは反デスモダス派の陣営に所属するすることになり、
「しかしこの仮面は何とかならねえのか? 鬱陶しくて仕方ねぇ」
デスモダスと同じ顔をしているケイルは仮面着用を強要され、若干の愚痴をこぼす。
「致し方あるまい。デスモダスの血族であることは武器にもなるかもしれんし足枷になるやもしれん。お前がそうであることを知っているものは少ない方が良いだろう?」
「まあ、そりゃそうだがよ……今更じゃねぇか? 俺
「問題ない。デスモダスは家と元老院評議会しか往復しない生活を送っていて、下級士民には全く顔を知られていないからな。だがここからは別だ」
ケイルらを引き入れた男はダサルという名であり、
「私の目的はデスモダスを排し、ニンファ様に
そう己の目的を隠さずケイルに伝えてきた。
ダサルによると魔王国一闘士民は十三人おり、
「一応聞いておきたいんだが、デスモダスのどこが駄目なんだ?」
「お前、六闘士民の時に教育は?」
「六闘士民は一日で終わっちまったんでね、受けてねぇ」
「……そうか、外から来たばかりか。どうりで無茶をするものだ」
「今現在、このディアブロスでは慢性的に食料民が不足していて
あれはもしかしてカワードが弱かったのではなく、
「なぜデスモダスは座視してるんだ?」
くるりと椅子を回して逆に座り直し、背もたれに顎を乗せながらケイルが尋ねると、露骨にダサルが顔をしかめる。
「奴にとって国が割れないことが第一優先だからだ。その為なら奴は
不機嫌を露わにダサルがそう吐き捨てるが、ケイルはケイルで少しばかり嫌な気分になってしまった。
――自陣営じゃなく国を見て行動してる。それじゃまるでアーチェみたいじゃねえか。
その考え方はアーチェに酷似している部分もあり、ケイルには安易に否定できるものではなかったからだ。
だが切り捨てられる方はたまったもんじゃない、というのがダサルたちの主張で、
「上位士民はいいさ、金に任せて魔力を比較的多く含む専属食糧民を買い揃えられるからな。しかも連中は髄血劣化防止の為に数多の食糧民を必要としている。結果として
この問題を解決するのが最終的なダサルたちの目標なのだそうだ。
「ダサルの旦那よ、あんたたちの目的が絶対正義かはさておき正当だ、というのは分かった。だがデスモダスを排除してしまって本当に問題はないのか?」
ケイルがそう尋ねると、何故そんなことを聞くとばかりにダサルが渋い顔になってしまう。
「……お前はデスモダスを殺したいのではなかったのか?」
「一応聞いておくが、何故それを知っている?」
「王城清掃員の中に我らの同胞がいたからだ」
成程、とケイルは頷いた。ということは小声で話していたアーチェの最後の言葉はさておき、ケイルが叫んでいた内容は全部聞かれていた、ということだ。
改めてアーチェの注意深さに感心するとともに、自分の迂闊さにケイルは恥じ入るばかりだ。
「真面目に生きろ、って俺は母さんに言われてるんだ。間違ってもデスモダスみたいにはなるな、ってさ。デスモダスを殺すことで魔王国民の大多数に迷惑がかかるなら、俺はそれをやれねぇんだ」
ママの言いつけは守らにゃならんぜ、と肩を竦めるケイルに猜疑の視線を向けていたダサルだったが、自分が旦那と呼ばれたことから唐突に気が付いたようだった。
「……お前、もしかしてまだ若いのか?」
「おう、まだ十六だよ。ディアブロスの外で
「むう……そんな上等な食糧民を連れているぐらいだ。年上かと思っていたが、そうか……」
どうやらダサルは魔力多めのアイズを連れているあたりからして、ケイルを年長者だと思っていたらしい。
「デスモダスを排した場合のリスクだが……仮に魔王陛下が何らかの理由でディアブロスを滅ぼそうとした場合の歯止めが効かなくなることだろう」
「……ちょっと待て、デスモダスって魔王より強いのか?」
ケイルがぎょっとした声を上げると、ダサルもそんなケイルに驚いたようだった。
「今更何を……いやお前、ゲイルだったか? もう一度六闘士民をやり直した方がいいぞ、切実に」
デスモダスに続いてダサルにまで「ちゃんと教育受けろよ」と言われてしまうと、流石にケイルも気まずくなってくる。
魔王国生まれの場合、余程のことがない限り士民がいきなり等級をガンガン上げていくことはできないし、どこかで壁にぶち当たった場合に一気に学習義務が積み重なるものなのだが……
ケイルの場合はトントン拍子で五闘士民まで来てしまい、その上就業する前にデスモダスとぶつかってしまって、今ここにいる。
結果として魔王国に関する基礎知識が全く頭に入っていないのだ。
「……あー、しばらく勉強に専念させて貰ってもいいか?」
「ああ、そのほうが無駄なトラブルを回避できそうだ」
そうしてダサルと合意の上で、ケイルは反デスモダス陣営の中でしばらく勉強することになったのである。
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