第220話 急転、そして無邪気な魔手

 「亜希子さん、やはり間に合いませんでしたね。」


 「そうね、陽葵さんがせっかくやってくれたけど、数時間の時間差かあ、仕方ないわね、またチャンスは必ずあるわ。」



 世界大戦が終結して洞窟に向かうことができるようにはなった。

 しかし次元洞窟は閉塞してしまっていた。


 ガーベラ王子はまた違った思いだった。

 陽葵さんがこの世界に残ってくれるのだ、あまり表には出さないが心の中ではホッとしていた。


 ****


 「6人の賢者が揃ってるだと?」


 マリアから説明を受け、グエンが唸った。


 「ワシもまだ実際にヘブンズドラゴン川が枯れたところを見たわけではないが、この世界の創造主、アゼリア・シーフォールドのジャブロー言い伝えによると、ドラゴンパレスを破壊するか機能を一時的にでも止めれば川は枯れるらしい、ただ、完全に破壊してしまえばこの世から水資源が枯渇し、世界は滅ぶことになる、水がなければ生きていけんでな。」


 「それでは七星の賢者様とは救世主などではなくこの世を終わらせる悪魔か魔王の類いということなの?」


 「そうかも知れんしそうでないかもしれん、ただ、残念ながら七星が揃うことはありえんよ、残りの一人『天』を司る七星の賢者はもうこの世にはおらんのじゃから。」

 グエンは腕組みして目を瞑った。


 ****

 

 「陽葵さーん。」


 マリアをグエンのところに送り届けた陽葵は一度自分の屋敷に戻った。


 そこに懐かしい?人物が訪ねてきた。


 「え、、っと、、」

 そこそこ令嬢の陽葵は人の顔を覚えるのが苦手であった、が、訪ねてきたのは人ではなくオリハルコン製のマテリアルボディのであった。


 陽葵は頭痛を感じた、どう言うわけか完全に忘れていたのだがじわっと思い出してくる、そうだ、魔導士の「巨人」さんだ、


 「巨人さん、ご機嫌よう、ずいぶんとお久しぶりのような気がします、確か天下一魔導士武道会以来でしたか。」


 「そうですよ、思い出して頂きましたか?」


 「大変失礼しました、ワタシ何故か記憶が曖昧で、でもお元気そうで何よりです。」


 「そんなことより、会食の時、イスラ・バラバラさんのことを尋ねられましたね、見つかりましたよ、よかったらお引き合わせできますよ。」


 「本当ですか!ぜひセレオラちゃんに会いたいです!突然ヒキガエルにさらわれて挨拶もできずにお別れしちゃったので。」


 「それでは明日にでももぐらインペリアルホテルの最上階のベランダまでいらしてください、私の本体がお迎えに行きます、本体は本当に大きいのですがびっくりしないでくださいね。」


 「わかってますわ、ワタシもセレオラちゃんの親指ほどの大きさしかありませんでしたから、もう慣れてますよ。」


 マテリアルボディの巨人さんは帰って行った、陽葵はまたあのそばかすのセレオラちゃんと会えると思うとワクワクしていた。



 「驚いたな、もぐら男爵は不在でヒナがもぐらホールディングスの総帥?ヒナを『抜いたら』なんだか面倒なことになりそうだけど、まあなんとかなるだろ、セレオラちゃん、喜んでくれたらいいなあ。」


 スネオラは7歳の少年らしく無邪気にワクワクしていた。

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