第214話 タイムリミット
少し時間は遡る。
諸星
なんとか前進しようとするのだが、
機関銃の弾も甲羅に頭を引っ込められては弾かれるばかりでほとんど役に立たず、迫撃砲で吹っ飛ばして相手を警戒させるのが精いっぱいであった。
戦闘車を出すには歩兵とセットでなければ効果は薄く、現実的にあまり役には立たなかった。
唯一の救いは航空戦力が飛来しなかったこと、ドラゴンの類が来ないことだけだった。
諸星
その状態で時間ばかりが過ぎていった。
最後に交信してからすでに15時間が経過した。
次元洞窟の状態も不安定になってきた。
あれから何度も交信を試みたがスマホが繋がることはもうなかった。
本当は何人か引き連れて探索に出かけたいのだが、洞窟を手薄にして万一にでも亜人の戦闘部隊が明石に出現するようなことになれば一般市民に多くの死傷者が出る。
それだけは避けなければならない。
「陸斗、、急いでくれ、洞窟はもうそんなに持たない。」
伝わるはずもないのだが、
****
バンカーヒルでは激しい戦闘が続いていた。
双方に数万人規模の死傷者が出ているが、一進一退で戦局は思わしくない。
おそらくベルゴロド公爵はドラゴンパレスからの増援を待っているのだろう。
亀人部隊も順次バンカーヒルに投入されてきたようだ。
飛竜や火地龍などが到着してしまってはもう12月王国を捨てて撤退するしかない。
場合によっては11月王国も放棄せざるを得ないかもしれない。
陽葵が飛び出してからもう10時間以上が経過している。
おそらく陽葵は死んでいるか、捕まって酷い目に遭わされているか。
できればあのままどこかに逃げてくれていればいいのだが、陽葵の性格ならそれもないだろう。
もう絶望的であった。
****
次元洞窟が開いてから23時間が経過する、何も動きはない。
次元洞窟の様子もかなり不安定となってきた、流石にもう撤収しなければ我々が二次遭難することになってしまう。
部下たちをそんな目に遭わせることはできなかった。
「もう限界だ!撤退する!」
「諸星隊長!、まだ時間はあります、ギリギリまで待つべきです。!」
「ダメだ!次元洞窟がこんなに不安定なんだ、危険を冒すわけにはいかない、場所はわかったんだ、またチャンスはきっとある。」
曹長は部下に撤収準備を命じた。
「隊長!撤収準備完了しました、乗ってください!」
「俺はエウロパに残る。」
「どうしてですか!隊長一人残して行けません!」
「俺だけは大丈夫なんだ、信じてくれ、幕僚長は理由はご存知だ、さあ行け!」
洞窟周辺に展開していた水陸機動団は整然と洞窟の中に消えていった。
諸星弾丸だけが亜人を防ぐべく洞窟前に仁王立ちする、場合によってはこの赤い眼鏡をつかわなければならないだろうな。
しかし、亀人部隊が洞窟に近寄ることはなかった。
後方から信じられない報告が上がってきたからだ、亀人部隊は大混乱の中にあった。
次元洞窟は24時間持つことなく、23時間15分で完全に
タイムアップである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます