第213話 女湯

 「コフェ〜ン!なんかドレスも身体中もドロドロベタベタして気持ち悪〜い、なんとかして!」


 バンカーヒルに向かうもふバスの中で陽葵が駄々をこねた。

 確かにドラゴンやトカゲの体液で汚れ、気持ち悪いことになっている。


 ラウンズ十二神将にはオートクリーニング機構が付いているらしく、もうすっかり綺麗になっており、あさひ日光菩薩フェンリル月光菩薩はほとんど出番がなかったので汚れることもなく、陽葵薬師如来一人だけがひどいありさまだった。

 

 「陽葵さま、バスの中ですし、しばらくご辛抱ください、仮王宮に戻れば入浴施設も替えのドレスもごさいます。」


 あさひ日光菩薩はこう言った陽葵薬師如来のわがままの扱いには慣れているのでいつものように嗜めたたしなめた


 しかしコフェンの回答は違っていた。


 「ご主人様のコマンドを受諾しました、もふバス後方を変化させ、温泉と洗濯設備を構築します、所要時間はおよそ15分です。」


 そう言うと、もふバスの後部構造が移動、変化し始め、15分で入浴設備温泉が完成した。

 入り口脇にはドラム式?洗濯機らしきものもある。


 「やったー!あさひ日光菩薩ちゃん!お風呂入ろ!」

 陽葵薬師如来はドロドロのドレスと下着を一気に脱ぎ、洗濯機に放り込んでスッポンポンになる。

 「ほら!あさひ日光菩薩ちゃんも!」


 あさひ日光菩薩の着ているものも陽葵薬師如来に剥ぎ取られてしまった。


 「あの、、マリア氷の巫女さんもお風呂ご一緒しませんか?、お風呂で溶けちゃうとかでなければ。」


 あさひ月光菩薩らしく、客人にも気を使っている。


 「よろしいのですか?あさひ日光菩薩さま、温泉など1000年ぶりですからぜひご一緒させてください、溶けたりはしませんわ、そうだ、銀狼さんも一緒ではいけませんか?」


 「え、え、さすがに男の方とは、、、」


 あさひ日光菩薩は11歳の少女らしく戸惑った。


 「ワタシはフェンリルさんならお風呂一緒でも構わないよー!」


 「あるじ氷の巫女が良いと言うなら我もご一緒しよう。」


 人型フェンリル月光菩薩はそう言うとサラサラと燕尾服を脱ぎ捨て全裸となる。


 「きゃっ!」

 あさひ日光菩薩が両手で目を覆い、しかし指の隙間から覗いてしまった。


 「え、えぇー!!」


 そこに現れた裸体は鍛え抜かれてはいたものの、乳房もあり、女性のそれであった。


 「なんだ、何を驚く。」


 「いえ、ワタシ、フェンリルさんは男の人だとばかり思ってました、陽葵薬師如来様はご存知だったのですか?」


 「そ、そうね、もちろん、知っていたわよー」

 陽葵薬師如来はお約束どおり明後日あさっての方角を向いて鳴らない口笛をヒューヒュー吹く。


 楽しい女湯、とあいなった。

 

 「そういえば陽葵薬師如来様の両手に浮かぶ文字は、ディ・タカンドラ文字でそれぞれ「医」と「薬」を、あさひ日光菩薩様の左手に浮かぶ文字は「文」を表しています、お二人は伝説の七星の賢者様なのですね。」


 1000年前から生きているマリアが教えてくれた。


 「これがそうなのか、そういえば陸斗兄さまの左手にも赤い痣があったかな。」


 「七星の賢者揃う時、ヘブンズドラゴン川が枯れてオリハルコンの船が姿を現すと伝えられています、あと4人、いえ、陽葵薬師如来様は二つお持ちですからあと3人揃うと伝説通りになりますわね、そのあたりはグエンが詳しいと思いますが。」


 そこそこ令嬢の陽葵はいきなり情報量が多すぎてアワアワしていたがその分あさひがしっかりと理解していた。


 温泉から上がるともうドレスも下着も綺麗に乾いていた。

 二人が下着をつける。


 「まあ、お二人の下着は銀狼さんの毛でできているのですね。」

 マリアは手触りと風合いを確かめる。


 「お恥ずかしい、これはワタシの手作りなんですよ、暖かくて縫い目がないので着心地最高なんです。」


 「まあ、ワタシもその下着欲しいわ。」


 「帰ったらマリアさんにも作ってプレゼントしますよ、楽しみにしておいてください。」


 「ふふふ、あなたの髪の毛の手触り、私好きよ。」

 マリアが人型フェンリルの髪を撫でる。

 「あるじに撫でるられるのは1000年ぶりかの、実によい。」


 人型フェンリルも気持ちよさそうに目を瞑った。


 「あのー、二人ともお洋服を早く着て欲しいのですが、、」


 全裸で撫で合うマリアと人型フェンリルを見てあさひは目のやり場に困っていた。


 バンカーヒル到着まであと3時間ほどかかる。

 4人は少し仮眠を取ることにした。


 マリアはフェンリルに寄り添い、陽葵とあさひは例の仮眠用羽毛布団に一緒にくるまった。

 「陽葵さま胸おっきい、いいな。〜」

 「あさひちゃんもすぐに大きくなるわよ。」


 疲れが出たのかいつしか4人は眠ってしまった。

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