第210話 ドラゴンパレス(竜宮城)

 陽葵たちの乗ったもふバスからドラゴンパレスの大きな塔が見えてくる。


 大樹のようにも見えるし、石造りのように見える。

 

 陽葵はなんとなくだが、前に社会科の見学で見た原子力発電所みたいだな、と感じた。


 その大樹?の周りに無数のトカゲがびっしりまとわりついているように見えたが、近づいて大樹の巨大さが見えてくるにつれ、その無数のトカゲの一匹一匹が恐竜ほどの大きさだとわかる、つまりそれは全てが巨大龍であった。


 こんなものに襲われたら12月王国などあっという間に全域が踏み潰されるだろう。

 あさひはことの重大さに戦慄せんりつしていた。

 そこそこ令嬢の陽葵はのほほんとしていた。


 陽葵たちのもふバスがドラゴンパレスの中央部に近づくと一体の巨大な飛竜が接近してきた。


 「おい、お前たちはここがドラゴンパレスと知ってやってきたのか?」


 ひとしきり大きな羽ばたきでもふバスの手前に浮遊ふゆうする。


 陽葵はもふもバスから顔を出して、


 「ご機嫌よう、飛竜さま、私はもぐら男爵令嬢のヒナと申します、第13帝国の皇女殿下オーロラ姫と一緒にドラゴンマスター様にご挨拶に参りました、謁見えっけんの許可をお願いします。」


 陽葵がベルゴロド公爵のからの紹介状を渡すと、


 「少しここで待っていろ、マスタードラゴン様に取り次ぐ。」


 そう言って飛竜は戻っていった。


 ****


 ドラゴンパレス竜宮城とは。


 陽葵たち地球人、フローラル連邦国のエウロパ星人たちも知らないことだが、このドラゴンパレスは古代人、宇宙人、その他なんらかの科学文明の遺産であり、木星の衛星エウロパ全体の環境を整え、生物が生きていく上で必要な水やエネルギーを提供している。

 ヘブンズドラゴン川とはこのドラゴンパレスが生成する豊かな水資源である。


 この宇宙にはいろいろな形のエネルギーが存在し、地球では主に「電気」エネルギーを活用する「電気文明」を採用した。

 それは電気に変換することが使い勝手が良いからだ。


 ただ、宇宙のエネルギーは全てが波動状エネルギーであり、その活用方法によって電気以外のエネルギーの形もありうる。


 波動エネルギーの塊である「物質」が崩壊ほうかいするときに発生させるエネルギー、(地球ではこれも電気エネルギーに変換するが)や次元の違いを利用してエネルギーを取り出す方法も考えられる。


 地球では既知きちのエネルギー利用法以外については全て大雑把おおざっぱに「魔法」とか「魔導まどう技術」と呼んでいるようだ。


 ****

 使いの飛竜が戻ってきた。


 「マスタードラゴン様がお会いくださるそうだ、ついてこい。」


 もふバスより大きな飛竜の後に続きドラゴンパレスの王宮に入城にゅうじょうした、一行はその巨大さに圧倒されていた。


 

 

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