第206話 皇帝謁見

 「おい!止まれ!お前はどこの部隊だ。」


 第13帝国大本営だいほんえいの衛兵がジャック・ブルースカイホークマンを止めた。


 「私は鷹人族長のジャック・ブルースカイである、モントレー皇帝に謁見えっけんを申し入れる。」


 慌てた衛兵の一人が伝令に走る。


 「ジャック・ブルースカイ卿!失礼しました皇帝陛下がお会いくださるそうです。」


 謁見の間に入室した鷹人ジャックは跪きモントレー皇帝にうやうやしく挨拶をする。


 「モントレー皇帝陛下、我が一族、鷹人部隊がお世話になっております、私は5月王国で不当に拘禁こうきんされておりましたがなんとか逃げ出して参りました、麾下きかに加えていただければ僥倖ぎょうこうでございます。」


 「おお、現族長殿が加わってくれるか、そちの弟が不慮の死ふりょのしは残念であった、兄のけいが引き継いでくれるなら心強い、よろしく頼むぞ。」


 オーロラ姫から事情を聞いていたモントレー皇帝は快く侯爵の位と鷹人部隊の大将軍に叙しじょした。


 「これはこれはジャック・ブルースカイ卿、あなたは5月王国で拘束されていたと聞きます、よく釈放してもらったものですな?」


 「おっしゃる通り、私は第13帝国に関わっていないにも関わらず、不当に拘束されていたのです、たかなしホークレス地方での鷹人差別はひどいものです、城の外では鷹人を殺せ!の声が満ちて生きた心地がせなんだ、いつ殺されるかわからない身の上、隙を見て牢番を切り殺し、命からがら逃げてきたのです。」


 「ほお、こちらまでにはヘブンズドラゴン川を越えなければならないはず、どうされたのかな。?」

 

 「実は皇国のオーロラ姫とは知己の仲であってな、姫と皇帝陛下の臣下の協力者のおかげで川を渡ることができたのです、皇帝陛下、オーロラ姫殿下、改めて御礼おんれい申し上げます。」


 モントレー皇帝とオーロラ姫が頷いたうなずいたことからベルゴロド公爵はそれ以上突っ込んでこなかった。

 

 「それではあのお方からも進軍の催促さいそくが来ております、ジャック・ブルースカイ侯爵と軍議を始めるとしますか。」


 「あのお方とは?」


 「もう隠す必要もあるまい、偉大なるドラゴンパレスの主人であるマスタードラゴン様である、目玉惑星キンモクセイの衛星である我が大ヨーロッパエウロパの真の支配者であらせられる。」


 やはりドラゴンパレス絡みか。

 ジャック・ブルースカイは腑に落ちた、あとは計画通り総攻撃のタイミングでモントレー皇帝とオーロラ姫を連れてフローラル連邦国側に寝返るだけである。


 ジャック・ブルースカイ卿の潜入成功の一連の事実は、飛躍-コフェン、ラインにより陽葵に逐一報告されたのは言うまでもない。

 ただ、オーロラ姫の侍女にベルゴロド陣営の間者が入り込んでいる、オートマタ「飛躍」により誰が間者であるか悟ることができたオーロラ姫は、その侍女には、鷹人が来てくれて第13帝国は圧倒的な勝利を得るだろう、彼は信用に足る武人だと話して聞かせた。

 その侍女はベルゴロド公爵にそのまま報告して銀貨を受け取る。


 あさひの「反間計」によりベルゴロド公爵は偽情報をつかまされたのである。


****

 その日も洞窟の外の星を見ていた「番人」は洞窟の奥のエネルギーの渦が急速に拡大しているのを感じ、振り向いた。


 「そうか、開くか。」


 ディ・タカンドラ世紀暦6月17日の惑星直列が始まった。

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