第205話 鷹人部隊の寝返り

 陽葵と鷹人ジャック・ブルースカイ、連邦国王皇太子ガーベラ王子、それに12月王国のポインセチア王子、その補佐官東村亜希子、ここには陸斗もいる。


 連邦国軍の宿舎となっているバルバロッサ準男爵の館では戦局をひっくり返すための軍議が行われていた。


 「陽葵さん、詳しくお話しを聞かせていただきますか?」


 「はい、以前魔境に陸斗兄さまを救出に行った時に私たちを無事に逃がすため第13帝国のモントレー皇帝のところにオーロラ姫が帰っていきました。」


 「なんと!あのオーロラ姫ですか?貴族位を剥奪されて放逐されたという。」


 当時、ガーベラ王子は陽葵を殺そうとしたオーロラ姫を絶対に許すことができず、貴族位剥奪の通知を受け取ると、殺すまではしなかったが、何の配慮もすることなく城下に放逐したのである。


 「はい、その後、もぐらホールディングスで採用して現在は『あさひ』という名前でワタシの補佐をしてもらっていました。」


 「そのあさひちゃんから、通信機を使った連絡があったのです、第13帝国ではその実力者二人が共に倒れ、大騒ぎになっています、ワタシはここにいらっしゃる鷹人の族長であるジャック・ブルースカイ卿に第13帝国に潜入してもらい、鷹人部隊をこちら側に寝返らせようと思っています、その代わりにそれが、成功したら鷹人部隊とモントレー皇帝、あさひちゃん、いえ、オーロラ姫の恩赦をお願いしたいと思います。」


 「ポインセチア王子、どう思うか。?」


 「そうですね、鷹人たちは単に鷹人差別をなくしたいだけだと亜希子から聞いています、現族長殿がこちらについてくれるのであれば問題ないでしょう、オーロラ姫はそこの陸斗殿、陽葵さんを助けるために自ら第13帝国に行ったと、もともとあの事件では法律上不問にされているのですから罪に問う理由がありません、モントレーはなんらかの処罰は必要でしょうが、この危機的状況を乗り切ることができるのであれば罪一等減じても問題ありますまい、地方で謹慎あたりが相当でしょうな、オーロラ様の父君でもありますし。」


 「モントレーさんは私が面倒見ますのでよろしくお願いします。」


 陽葵は祈るような格好で嘆願した。


 「陸斗殿、東村卿はどう思いますか?」


 「戦略的には鷹人の航空戦略がこちら側に来てもらうならこれは大きな影響があります、恩赦しても世論も騒がないでしょう、どうですか?亜希子さん。」


 


 「ガーベラ王子、ポインセチア王子、第13帝国の後方にはドラゴンパレスがついていると報告を受けております、鷹人部隊が北門を超えてくればフローラル連邦国軍は総崩れになります、そうなれば12月王国、11月王国あたりまではドラゴンパレスと第13帝国の占領下に置かれることになりかねません、選択の余地はないと存じます。」


 「よし、やろう、ジャック・ブルースカイ卿ホークマン、あなたを信じる、よろしく頼む。」


 ガーベラ王子は決断した。


 鷹人ホークマンは北門をこっそり飛び夜の帷よるのとばりに紛れて第13帝国大本営に向かった。


 もちろんこの事実はコフェン-飛躍ラインによって第13帝国のあさひにも伝達される、あさひから計略の説明を受けたモントレー皇帝は決意した。

 自分が始めてしまったこの戦争、オーロラだけでも逃し、自分は死んで責任を取ろうと。

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