第201話 決戦前夜、ドラゴンパレスの魔手

 「お父様!どう言うことなのですか?」


 オーロラ姫は困惑こんわくしていた。


 ベルゴロド公爵が死んでその専横せんおうが終わったと思ったのだが、その後継者こうけいしゃと称する狼人が現れたのである。


 それも蜥蜴人リザードマン亀人トータスマン合わせて60万人の大軍勢と共に。


 第13帝国としてはこれで100万人規模の大軍勢となるからフローラル連邦国100万人と互角、いや、個々の戦闘力ははるかに帝国側が上なので優位に立つことになる。


 ただ、モントレー皇帝はこれまで以上に狼人に頭が上がらなくなり、完全なるお飾り皇帝になることを意味する。


 「オーロラよ、そちの働きでベルゴロド公爵を除くことができたのじゃが、ベルゴロドは単なる駒だったようじゃ、蜥蜴人リザードマン亀人トータスマンまで出てくるとなるとこれはドラゴンパレスが動いているのであろう、ワシはとんでもない禁足地きんそくちに足を踏み入れてしまったようじゃ、オーロラ姫、今度こそ早めに国を出たほうが良い、急ぐのじゃ。」


 バタン!


 突然扉が開かれ、一人の狼人が数人の蜥蜴人兵士を伴ってつかつかと入ってくる。


 「これは皇帝陛下にはご機嫌麗しゅう、私はこの度ベルゴロド公爵家を継いだ、ゾーマ・ベルゴロドと申します、どうぞ、お見知り置きを。」


 「そちの公爵家相続を認めた覚えがないのじゃがどういうことかな?」


 「これはこれは事後承諾じごしょうだくになってしまいますが、認めていただけますかな?モントレー皇帝陛下、これはあのお方の意思でもあるのです。」


 モントレーは逆らうことができなかった、やはり一刻も早くオーロラ姫を脱出させなければならない。


 「それではモントレー皇帝陛下、我々第13帝国軍40万人にあのお方からの増援、蜥蜴人軍30万人、亀人軍30万人、それに飛竜20匹、火地龍10匹を頂いております.一気にフローラル連邦国軍100万人を踏み潰すとしましょうか。」


 ゾーマは不敵な笑みふてきなえみを浮かべた。


 ****


 「なんだと!第13帝国軍にドラゴンパレスから増援だと!」


 フローラル連邦国軍の総大将、ガーベラ王子はソファーにへたり込んだ。


 「はい、斥候からの報告によると蜥蜴人30万人、亀人30万人に火地龍に飛竜を加た総勢100万人規模であるようです。」


 大将軍虎人タイガーマンは分析結果をそのまま伝える。


 「勝てるのか?」


 「人数は互角ですが、我が軍の大半が野鼠人を中心とする歩兵であり、同数と言うことは劣勢に立つことを意味します、それに火地龍や飛竜、これは脅威です、制空権を奪われるほか、地上部隊が一気に焼き払われます。」


 「北門を固く閉じ、籠城するしかないと考えます、しかし飛龍が来ればこれも崩壊します、敵の鷹人部隊を引き入れることができればあるいは。」


 虎人将軍の報告にガーベラ王子は頭を抱えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る