第198話 月光の魔狼
あれからベルゴロド公爵はオーロラ姫と一度も話すことができなかった。
「こんなことならモントレーの話をその場で受けておくべきだったか。」
オーロラ姫には常に鷹人のブルースカイ侯爵が張り付き、ベルゴロド公爵の接近を阻止していた。
モントレー皇帝にそれとなく話を聞いてもはぐらかされ答えてもらえなかった。
形の上ではオーロラ姫を妻にする話は一旦断ってしまっている。
しつこく聞くこともできなかった。
「ブルースカイ侯爵の野郎、まさか奴もオーロラ姫を狙っているのか?そうだ、きっとそうに違いない。」
オーロラ姫に淡い恋心のようなものが芽生えていたベルゴロド公爵は嫉妬心のようなものがだんだんと大きくなってきた。
そしてそれはブルースカイ侯爵への殺意へと変貌するのにそう時間は掛からなかった。
「ブルースカイの野郎を襲撃して殺してしまおうか、しかし故なく殺せば奴の部下の鷹人部隊が許さないだろう、奴と俺の手下の数は同じくらいなんだ、フローラル連邦軍との戦争のさなかに
「悩むまでもないな、大人数で一気に襲いかかりブルースカイのやつを殺す、オーロラ姫を放置して飛ぶこともできまい、そのあとオーロラ姫をそのまま部屋に連れ込み我がものとしてしまえばもう誰も文句を言うまい、そもそもオーロラ姫は俺に惚れてるんだ、抵抗などしないだろう。」
ベルゴロド公爵はもう一度大きな舌なめずりをし、決行のタイミングを待った。
****
そこそこ令嬢の陽葵は高熱から復帰したが、色々あって「大切なこと」を陸斗に伝え忘れていた。
それは総帥の仕事をしている最中にある名前を書類に発見した時のこと。
「12月王国補佐官、東村亜希子」
「〜〜〜〜〜!陸斗兄さま〜〜〜!」
慌てて執務室のドアをバタンと開けて飛び出そうとした陽葵はそこでノックをしようとしていた人物にボスン!と「受け止められ」た。
「あ、ごめんなさい。」
陽葵が見上げるとそれは知らない男性であった。
Gacktを銀髪にしたようなイケてる大人の男性だ。
「あ、フェンリルおじちゃん!こんにちは。」
「コラ!コフェン!知らない人に失礼でしょ!」
「野鼠の嬢ちゃん、我はフェンリルじゃよ。」
声は間違いなくいつも尊大なフェンリルであった。
「ほえ。?」
そこそこ令嬢の陽葵は鼻から息が抜けるような変な返事をしてしまった。
「ふぇ、フェンリルさん?」
すごい勢いで数歩後退して来客用ソファに足を取られてソファにボフッと真っ逆様に転落した。
犬神家状態である。
「おいおい、野鼠の嬢ちゃんは相変わらずそそっかしいのう。」
そう言いながらそのGacktもどきさんは陽葵の両足を持って引っ張り上げてくれた。
スカートがめくれないように必死で両手で押さえた陽葵だったがなんともカッコのつかない黒歴史確定の瞬間だった。
なんとか普通に立ち上がった陽葵は事情を聞く。
「それがよくわからんのだ、気がついたらこの姿になっておった、
フェンリル自身も
そこそこ令嬢の陽葵はこの騒ぎでまた「大切なこと」をそのまま忘れてしまった。
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