第196話 運命の日 6月17日 惑星直列
「まだ孫の陽葵の行方はわからんのか。」
「なんとか、糸口らしき
今回の当事者、プロジェクトリーダーの明石市立航空宇宙大学量子物理学教授の福島教授が額の汗をぬぐいながら答える。
「わかっていることを報告せよ。」
川嵜四郎は言い放つ。
「 AI松浦明石市長のリミッターを外し、限界を超えたシミュレーションを行った結果、な、なんと言いますか、陽葵様は木星の衛星エウロパにいらっしゃるのではないかという可能性が導き出されました。」
「それで、戻れる目処は立ったのか?」
川嵜四郎はさらに詰め寄る。
「そ、それが、AI松浦明石市長は過負荷により現在停止している状態でして、それ以上のことはなんといいますか。」
福島教授は歯にものが挟まったような弁明をする。
「AI松浦明石市長がダメなら米国のBBMでも富嶽通にでも計算をさせれば良い、ポートアイランドのスーパー量子コンピュータ「やまと」にでも計算を引き継がさせろ!いますぐにだ!」
川嵜四郎の鶴の一声で川嵜陽葵救出作戦は大きく進むことになる。
そして、富嶽通製スーパー量子コンピュータ「やまと」は一つの可能性を弾き出す。
6月17日に5つの惑星が「惑星直列」を起こす、その時に改めてスプリング♾️でビッグバンを起こせば再び空間の歪みが開くというもの。
その確率は0.5%。
川嵜四郎は迷うことなく可能性に賭けるよう指示した。
街中のテレビニュースや動画ニュースでは盛んにこの天体ショーを取り上げた番組が花盛りである。
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洞窟の番人はいつものように洞窟から星を見ていた。
「ふん、また
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フローラル連邦国の各地でも
占星術の時代から過去に何度も惑星直列の日には様々な異常な事態が起きていて要注意の日とされているからだ。
いろんな伝説も語り継がれている。
先日ソーゴ王子が語ったかぐや姫伝説もその一つだ。
ただ、現在のフローラル連邦国は第13帝国との間に始まってしまった戦争の損害や死者数のニュースの陰に隠れてしまい、惑星直列のニュースを気にする人はほとんどいなかった。
12月王国北門付近のバルバロッサ準男爵の館は臨時の野戦病院となっており、負傷兵が溢れていた。
100万のフローラル連邦国軍も魔境に潜んでゲリラ攻撃を仕掛けてくる帝国軍にはこれといった手立てもなく、いたずらに時間を消費し、死者、負傷者を増やしていたのである。
戦争は泥沼化の様相を呈していた。
[七星の賢者降り立つとき世は治り、七星の賢者去る時世は乱れる。]
この伝承には続きがある。
[一人の賢者が二つを相兼ねることあらば乱世は永遠に滅ぶ。]
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