第194話 明石市某所にて

 「何だって??AI松浦明石市長フルスペック量子コンピュータ過負荷かふかで停止したって?」


 令和22年時点において、明石市のライフラインをはじめとするすべての都市機能としきのうはフルスペック量子コンピュータであるAI松浦明石市長が維持している。

 

 充分能力に余力はあるはずなので本来は過負荷になどならないはずである。


 「やはり例の空間の歪みの展開予想計算てんかいよそうけいさんが負担をかけているということか、、、」


 先日のスプリング♾️で発生させた小規模なビッグバン時において、川嵜陽葵、諸星陸斗、東村亜希子の3名が忽然こつぜん消失しょうしつした事件のシミュレーションを行っていたわけだが、どうやらとんでもない大きさの裂け目さけめなのかもしれない。


 「そういえば昨日の計算ではわずかながら諸星陸斗三等陸尉さんとうりくいとの交信の痕跡こんせき検出けんしゅつされたと報告を受けている、それが関係しているのか。」


 「3日前の80億回目のシミュレーションでは3人が木星の衛星エウロパにいるとかいうとんでもない結果も出されているようです、ますます訳がわからなくなってきました、どちらにしてもAI松浦明石市長が停止してしまった以上地方自治法ちほうじちほうに基づき速やかに南口兵庫県知事に意思決定いしけっていを引き継いで貰わなければなりません。」


 この時点の地方自治法の規定ではAI首長くびちょうとAI市議会を採用している自治体の機能に障害しょうがいある時は意思決定いしけっていは生身の人間である兵庫県知事及び県議会議員が引き継ぐことになっている。

 AI副市長を置くほどの予算もなく、人間の副市長を置くならそもそも市長をAI化する意味がなくなり本末転倒ほんまつてんとうであるからだ。


 明石市の補佐官ほさかんから連絡を受けた南口兵庫県知事は直ちにポートアイランドにある富嶽通ふがくつう製のスーパー量子コンピュータ「やまと」による都市機能維持を指示した。

 今後、意思決定が必要な事項については南口兵庫県知事によって決定されることになる。

 ただ、南口兵庫県知事は何期か明石市長を務めた経験もあり、明石市運営のツボは心得ていたのでその点では安心でもある。

 

 道路交通についてはAI松浦明石市長の指示により信号機を極力減らして主要な交差点には円形交差点えんけいこうさてん、ラウンドアバウトを採用したことから交通に大きな混乱はなかった。


 災害による停電対策が思わぬ形で役に立ったわけである。

 それに令和20年の大きな戦争でばら撒かれたGSIグローバルサーチャーインセクトが発電所に入り込み、停電を引き起こす事例が増えてきたところだ。


 人口30万人の明石市の都市機能は、ポートアイランドのスーパー量子コンピュータ「やまと」の働きによりゆっくりと息を吹き返し、またいつも通りの生活が戻ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る