第180話 悩めるオーロラ姫、陸斗再び

 「陽葵さま、おいとまをいただきたく思います。」


 意を決したオーロラが陽葵に言う。


 「オーロラちゃん、お父さまのところに帰りたいの?」


 「いえ、お父さまには会いたいですけど、こうなったのも元はといえばワタシの浅はかな行動が原因です、今更お父さまのところには帰れません、でも、ここにいて『モントレーの娘』だとバレれば迷惑をかけます。ですからここを離れたいのです。」


 「まあ、オーロラちゃんはもう妹も同然なのよ!そんなことは言わないわ。」


 陽葵はオーロラを固く抱きしめて髪を撫でた。


 「そうだ、オーロラちゃん、しばらくの間、名前を変えるのはどうかしら。?」


 「名前、をですか?」


 「うん、ほとぼりが覚めるまでね、そうね、うーん、オーロラは夜明けとか言う意味だから、、『あさひ』ちゃんとかどうかな?ワタシの故郷の言葉で登ったお日様のことを言うの。」


 ※この異世界では太陽系第五惑星目玉惑星キンモクセイ(地球での呼び方はジュピター、木星)からの輻射熱で温暖な気候を保つているので、お日様の概念はない。


 オーロラは少し考えて。


 「アサヒ、いい響きですね、それでいいです。」と答えた。


 「そしたら今日からあなたは『あさひちゃん』ね。」


 こうして陽葵の優秀な秘書「あさひ」が誕生したのである。


 ****


 「まいったな、、」


 12月王国の北門を出て魔境までの道を調査していた陸斗はつぶやいた。


 ドラゴンパレスまでの道のりについてある程度目処が立ったのだが、その調査の帰り道のど真ん中に正体不明の武装国家が樹立されてしまったのである。


 当然ながら陽葵の用意してくれた12カ国フリーパスは使えないだろう。

 こんな時期に魔境を調査していたのであるから第13帝国からスパイの疑いをかけられても仕方ない状況であった。


 ドラゴンパレスへの道のりでいくつかの鷹人の集落でもお世話になっている。魔境に入り込んでいることは鷹人たちから第13帝国に報告されていることだろう。

 

 陸斗は幼い頃から厳しい戦闘訓練も受けて一対一なら負ける気はしない、しかし、相手は鷹人である。


 空中から攻められては空を飛べない陸斗は手も足も出ない。

 強行突破は不可能であった。


 陸斗は改めて自己の測量に基づく自作の地図を広げた、そしてふと気づく。


 「川か、、」


 ヘブンズドラゴン川はこの位置から大きく蛇行して10月王国につながっている。

 何らかの方法で川を下れば第13帝国を通らずに10月王国まで戻ることができそうだ。

 「それしかなさそうだな、とりあえず船か、、」

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