第179話 第13月帝国「大金鶏菊帝国」の樹立宣言

 ソーゴ王子殿下の誕生日パーティーも終わりに近づいた頃、急報が届く。


 12月王国の北門からまっすぐ北に進んだ魔境の入り口付近に鷹人たちが多く暮らす故郷がある。

 無実の謀反の罪で訴追されたモントレー元子爵とそれに追随する不平貴族とその私兵、そして鷹人差別に不満を持つ鷹人たちが集まって戦闘国家の成立を一方的に宣言したのである。

ここに第13帝国樹立が宣言された。

 国の花は「オオキンケイギク」である。

 

初代皇帝には11月王国を追われたモントレーが就いた。


 1000年続いたフローラル連邦国12カ国の平和はここに崩壊したのである。



 「鷹人どの、申し訳ないが貴殿を一時拘束する。」


 ソーゴ王子が親衛隊に指示して鷹人を拘束した。


 「そんな、、鷹人さんは私の護衛ですし反乱には関係ありません、どうにかならないのですか?」


 「陽葵さん、鷹人殿が第13帝国に関わっておられないことはわかっておりますが、こうなってしまっては国民の理解が得られないでしょう、それに一部の過激な野鼠人たちが激情に任せて鷹人殿を襲撃することも考えられます、疑いが晴れれば必ず解放いたします、今はワタシにしたがってください、お願いします。」


 「陽葵さん、私は大丈夫です、ただ、私の同族が反乱を起こしてしまったのではソーゴ王子殿下の言う通りでしょう。逆にこんなご迷惑をおかけして申し訳ございません。」

 鷹人は深々と頭を下げて親衛隊とともに退出した。」

 城の外ではソーゴ王子が危惧した通り、「鷹人を殺せ!」だの「第13帝国を滅ぼせ!」と言った市民の暴動に近い騒ぎが起きかけていた。

 鷹人を庇えばかばえば今度はもぐらホールディングスの企業そのものが標的にされかねない。

 ここはソーゴ王子に任せるほかどうしようもなかった。


 第13帝国と北門で接している12月王国のセン王子殿下と御付きの武官、東村亜希子は急ぎ国に帰り、北門の守りを固めることにした。

 連邦国12カ国からも兵を集めることになるだろう。

 


 陽葵も急ぎガーベラ王国に帰還することにした。

 「ガーベラ王子殿下!緊急事態ですから王子殿下と虎人さんだけでもわたしの自家用機フェンリルに乗られませんか?たくさんは乗れませんがお二人だけなら同乗していただけます。」


 「それは助かる、よろしくお願いします。」

 

 陽葵と秘書のオーロラ、ガーベラ王子と虎人は陽葵の自家用機フェンリルで一路、海のように広いヘブンズドラゴン川上空を駆け抜けて10月王国へと急いだ。


 髪をばっさり切り、メガネをかけたオーロラにガーベラ王子は気がついていない様子だった、いや気が付かないフリをしていたのかもしれない。

 虎人はオーロラに気がついていたが、武人らしく余計なことは一切喋らなかった。


 そのオーロラは青くなっていた。


 ずっと行方知れずだった父の消息が知れたと思ったら第13帝国を一方的に樹立宣言とは。


 知識、見識に知能も高いオーロラにはそれが何を意味するかよく理解していた。


 「お父さま、なぜ。」

 声にならない声を上げ、ただただ青くなるしかないオーロラであった。

 

 

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