第176話 史実、鷹人による野鼠人大虐殺

 「陽葵ひなさん!ようこそ!お待ちしてましたよ。」

 ソーゴ王子がわざわざ出迎えてくれた。


 「ソーゴ王子殿下ご機嫌きげんよう、王国創立祭以来になりますね、お誕生日おめでとうございます!」


 そう言って陽葵は自作の紫がかったうさぎの胸に「5」と入ったぬいぐるみをプレゼントする。

 

 「おお、陽葵さんの手作りですか?嬉しいな、もはや陽葵さんの腕は国宝級ですからね。」


 「それと男爵位と、もぐらホールディングス総帥になられたとか、本当におめでとうございます、これで私が陽菜さんにしても問題ないということですね。」


 「まあ、王子殿下、嬉しいですわ、ありがとうございます!」


 「おい!ソーゴ!抜け駆けぬけがけはなしだぜ!」


 他の王子たちからブーイングが巻き起こった。


 「それと鷹人ホークマンどのとも王国創立祭以来になるか。?」

 ソーゴ王子は鷹人ホークマンに話しかける。


 「ソーゴ王子殿下、恐れ多いことです、鷹人ホークマンである私を招き入れていただき本当にありがとうございます、一生の思い出になるでしょう。」

 鷹人はうやうやしく頭を下げて受ける。


 「そうだな、ホークレスたかなし地方の我が国に鷹人ホークマンが入国したのは国史では500年ぶりになるそうだ、鷹人ホークマンどのも歴史に名を刻みましたな。」

 

 「しかしながらこのホークレス鷹なし地方では1000年も昔の鷹人による野鼠人大虐殺だいぎゃくさつをいまだに恨みに思っている勢力があるのも確かだ、当時は双方亜人あじんに進化したてでそれ以前の弱肉強食じゃくにくきょうしょくの風習の名残なごりでノネズミ大虐殺だいぎゃくさつ事件を起こしたと聞いている、当時はある意味仕方ないことだと思うのだがな、おっとこれは内緒にしてくだされ、野鼠人から王室に苦情が入りますのでね。」


 「我々鷹人ホークマン鷲人イーグルマンの遠い先祖が野鼠人の方々を虐殺して回っていたのは歴史的事実、ただ、文明も進んだ現代ではそのようなことはほぼなくなっています、できれば8月から12月王国のように我々を受け入れてもらえる時代が早く到来することを願うばかりです。」


 「そうですな、ワタシが国王になる頃には鷹人ホークマンホークレス小鳥遊地方への入国禁止法令を廃止したいものです。」

 ソーゴ王子と鷹人ホークマンは固い握手を交わした。

 歴史的瞬間であった。


 そしてソーゴ王子の誕生日会は盛大に執り行われた。

 なお、オーロラの心に引っかかっていた11月王国のヒヤク王子殿下は公務のため今回は欠席とのこと、オーロラは少しホッとしていた。

 12月王国のセン王子殿下は出席していたが、オーロラには全く気付いていない様子だった。


 ところで陽菜には異常事態いじょうじたいが起こっていた。

 パーティの途中でお花を摘みお手洗いに会場を出たのであるが、その帰りの廊下で腕を掴まれ軍服を着た士官に空き部屋に引きずり込まれたのである、野鼠スキルで高速移動こうそくいどうできる陽葵であったが、腕を掴まれてつかまれてしまってはもう逃げられなかった。

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