第174話 星の好きな鷹

 5月王国に向かう自家用機フェンリルの中で陽葵は鷹人とたわいない話をしていた。


 「へえー、鷹人さんは星がお好きなんですか?」


 「はい、普段は戦闘訓練に明け暮れる毎日ですし、仕事のない夜はのんびりと星とか惑星を眺めるのが趣味なんです。」


 そこそこ財閥令嬢の陽葵は「すいきんちかもくどってんかい」くらいしか覚えていない。


 「やっぱり『すいきんちかもくどってんかい』なのかしら?」


 「ちょっと意味がわかりませんが、星とか惑星の図鑑や本は昔からよく読んでましたね。」


 続けて鷹人が自慢げにうんちくを披露する。


 「私たちが住んでいる衛星つきは大きな目玉惑星キンモクセイの周りを回っていてその輻射熱で温暖な気候を保ってます、他にも小さな惑星が星の周りを回っていて、青い惑星とか赤い惑星にはもしかしたら人類が住んでいるかもしれないと私の故郷の魔洞窟に千年住んで星の研究をしている私の師匠は言ってます、なんだか夢がありますよね。」


 「ふーん、そうなんだ。」

 小学校で習った理科の内容を完全に忘れていたそこそこ財閥令嬢の陽葵は大半を聞き流していた。


 「それと、近いうちに、たいようと星を回る全ての惑星が一直線に並ぶ『大直列』という天体ショーが観れるとか師匠は言ってましたね、その時には星を渡ることができるとか、今思い出しました、本当かどうか分かりませんが夢がありますよね。」


 まあ、物識りなオーロラちゃんが突っ込まないので鷹人の話は正しいのだろう。


 あまり細かいところを気にしないのが陽菜の長所である。


 陽葵はコフェンにふと聞いてみたら。


 「ねえ、コフェン、フェンリルなら宇宙とか飛べるのかな?」


 「最適解、フェンリルおじちゃんなら高度1万メートルくらいまでは飛行可能です、しかしながら3人は99パーセントの確率で窒息死します、高度を1万メートルまで上げますか?」


 コフェンが機械的に返事をする。


 「いや、このままでいいです。」


 陽葵たちの自家用機フェンリルはヘブンズドラゴン川を渡りきり、スズラン王国の街並みが見えてきた。


 鷹人ホークマンが国境を越えたかなしホークレス地方に足を踏み入れるのは実に500年ぶりである。

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