第173話 右腕
それからの陽葵はオーロラを連れて歩くことが多くなった。
そこそこ財閥令嬢の陽葵は地球での令嬢経験はあったが、この異世界ではずっと村娘、平民であり、貴族制度についてはほぼ無知であった。
元モントレー子爵令嬢のオーロラの貴族としての知識や経験はにわか貴族の陽葵にとっては非常に有用であったし、そこそこ令嬢の陽葵に足りなかった膨大な知識や見識、もぐら男爵の計略を一目で見破った知能の高さは陽葵に足りなかったのもを補って余りあるものであった。
もちろんコフェンは聞けばほぼ何でも正確に答えてくれるが、その質問が適正に行われなければそれほど役には立たない。
現代においても、ネットと繋がっていても「検索能力」がなければネットなど何の役にも立たないのと同じである。
その点でもコフェンの核を製造した国の生きた知恵の塊であるオーロラはコフェンも有用に利用できていた。
陽葵はこの高性能コフェンを肩叩きくらいにしか有効利用していないようであったし。
「陽葵さま、明日のソーゴ王子のバースデーパーティーの準備は終わったのですか?」
「えー明日だっけ、何もしてないよ。」
「陽葵さまはあれだけお誕生日会を楽しみにしてらっしゃったのに。もうー。」
しっかりもののオーロラは逆に陽葵の母親のようであった。
もちろんその後オーロラによって寸刻で準備が整ったのはいうまでもない。
オーロラは陽葵の秘書になるにあたって長かった髪をばっさりと切り、メガネをかけるともうモントレー子爵令嬢の面影は姿を消した。
おそらくヒヤク王子でも簡単に気が付かないであろう。
この頃にはオーロラは名実ともに陽葵の右腕とも言える立場にあった。
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