第170話 二人の随伴者

 スズラン王国ソーゴ王子の誕生日パーティ当日朝、もぐら男爵令嬢兼もぐらホールディングス総帥の陽葵はヘブンズドラゴン川上空を自家用機フェンリルに乗って飛行していた。


 随伴には共に異色の二人が同乗している。


 一人はホークレス小鳥遊地方の国法で原則として入国を禁止されている鷹人ホークマン


 「陽葵さん、護衛として雇っていただいたのはありがたいのですが、ワタシはヘブンズドラゴン川の向こう側へは先方の法律で入国を禁止されているのですが、本当に大丈夫なのでしょうか?」


 「それは虎人タイガーマンさんに確認したのですけれど、貴族特権の範囲は割と広くて、貴族に随伴ずいはんする場合にはその地方法は適用されないみたいよ、貴族って便利なのね、せっかく貴族になったのですからめいっぱい権力を利用しないとね、鷹人さん、ホークレスたかなし地方に行ってみたいとおっしゃってましたし虎人さんはガーベラ王子殿下の護衛ですしね、護衛任務よろしくお願いしますね。」

 「もちろんですよ!全力で陽葵さまをお守りします!」


 「コラ!トリ野郎!口ばっかじゃないだろうな本気出せよ!」


 「コラ!コフェン!鷹人ホークマンさんに失礼でしょ!」


 「失礼しました、鷹人将軍閣下ジェネラルホークマン、陽葵様の護衛をよろしくお願いします。」


 コフェンは相変わらずである。


 鷹人は虎人に次ぐ実力者だ、もぐらホールディングスの総帥になればさらに危険な目に遭うかも知れない、頼りになる護衛であった。



 今一人はフェンリルのアルバイトお世話係、オーロラである。


 ****


 少し時間を戻す。


 アリスおばさんが陽葵のところに来てお願いがあるという。


 「ねえ、陽葵ちゃん、いえ、もぐら男爵令嬢陽葵さま、女の子を一人お屋敷で働かせてもらえないかしら。」


 「アリスおばさん!アリスおばさんはワタシの恩人なのですからこれまで通りヒナ、と呼んでください。」


 「王国創立祭が終わったあとに実は女の子を一人お世話しててね、陽葵ちゃんも昔もぐら男爵様のお屋敷で働いてたでしょう?同じようにお仕事決まるまでしばらく働かせてあげて欲しいの。」


 「そんなのお安いご用ですよ、アリスおばさん、ワタシも最近忙しすぎて家のこととかフェンリルのお世話ができてないからこちらからお願いしたいところよ、お屋敷の執事さんにはお話し通しておきますので明日からでも来てください。」


 「そう、助かるわ、すごく頭のいい子だからお仕事は見つかると思うのですけれど。」


 陽葵は「あのオーロラ嬢」だと知らずにフェンリルのお世話係に雇っていたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る