第124話 ドールショップ「もふもふ」
王国創立祭が始まった。
10月王国、ガーベラ王子の開会宣言と共に祝砲の連発が発射され、華々しく始まった。
本日はプレオープンということで創立祭関係者と王族、貴族が招待されて出店を見学することになっている。
今夜には王宮の広間で前夜祭のダンスパーティーも行われる。
陽葵も土竜男爵にエスコートされて参加することになっている。
陽葵の
アリスおばさんとその友人の娘さんの野鼠人たちが店を手伝ってくれることになり心強い。
「ヒナちゃん、とうとうオープンね、なんだかドキドキするわ。」
「アリスおばさん、ミラちゃんたちもどうかよろしくお願いします、お給金は弾みます。」
陽葵の店では一体あたり15000ディナールあたりの値付けをして一般の人も買いやすくしていたけど、王国創立祭の店では
24色のフルカラーを使った作品は100万ディナールの値札を付けてある。
値段というものは価値に見合ったものを。
やはり経営者らしい土竜男爵の的確な進言であった。
実際、陽葵の作品は他国でも類を見ない素材と品質であり、誰にも真似のできない陽葵の
これでも安いくらいであった。
おそらく他国でオークションなどに付されれば作品によっては一億ディナールで落札される可能性もあるだろう。
それはさておき、陽葵の店は大量の展示品に
フェンリルの
こちらは安く提供できるのであまりお小遣いのない若い子にも人気である。
いまはアリスおばさんの隣に住んでいる野鼠人の三つ子の女の子を雇っている。
この子達は陽葵がアリスおばさんのところに転がり込んだ時期に生まれた子たちでそろそろ
三人とも手先は器用だし覚えも早い、アイアンニードルの扱い方を教えたらすぐにコツを覚えて作品一体を数時間で完成できるようになった。
それぞれ名前をミラ、サラ、カーラと言う。
「陽葵おばさま、ここの目の縫い付けどうでしょうか?少し甘いでしょうか?」
仕事熱心なミラが質問する。
13歳でおばさま呼ばわりはどうかと思うけど、半歳のこの子たちから見れば26倍も生きてるワタシって、仙人みたいなものかしら。
きっとワタシたちが300年生きてるエルフを見ているような感じなんだろうなあ。
ミラたちに「陽葵おねえちゃん」と呼ばせることはこっそり断念した。
見た目はもうミラたちの方がお姉さんなんだし。
妹のカーラは再来月には野鼠人族長の1歳の息子サフィのところに嫁入りすることが決まっている。
「結婚か、想像もつかないわね。」
なんだか
半歳で嫁入りすると言うことは逆に恩人アリスおばさんはそろそろ
横にちょこんと座ってお店を手伝ってくれているアリスおばさん。
お世話になって数ヶ月だけど、アリスおばさんにとっては人間の20年分くらい歳をとったことになる。
歳は聞いたことがないけどもう野鼠人の平均寿命の5歳は超えていると思う。
アリスおばさんにも元気なうちに恩返ししたいな。
そんなことを考えていた。
「あーーー!」
サラちゃんが突然叫ぶ。
「な、何?」
一同がすごい勢いでサラちゃんの方を向く。
「ヒナおばちゃん、お店の名前決まってない!」
「エェー!」
一同が
「忘れとった、」
あまりの忙しさにすっかり店名を考えるのを忘れていた陽葵。
そのあたりにそこそこ令嬢の
「うーん、うーん、どうしよう。」
陽葵は両手で頭を抱えてうなる。
もうお客さんが来てしまう。
「えい!店名は[ドールショップもふもふ]よ!」
陽葵はハンドバッグから
「うなれ!
と叫ぶと、高速ミシンにも負けない神技を繰り出し、ニードルフェルトのタペストリーを
わずか15分で「ドールショップもふもふ」の看板の
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