第111話 そこそこお姫様の生活

 「お姫様のエサ?」


 「それなら蜜と木の実や花の花粉を混ぜたものをよくすりつぶしたものならよく食べるようだよ、お姫様のエサブック買わないかい、2000ディナールにしとくよ。」


 「まったく、お姫様ってのにはお金がかかるわね、セレオラのためだから我慢するけど。」


 イスラはお姫様のエサブックを抱えて急いで帰る。


 そしてそのレシピ通りに不揃いな団子を作り、陽葵のところに持っていく。


 「ひなちゃん、ごはんですよー。」


 陽葵の前には甘い香りのする得体の知れない物体が置かれる。

 とりあえず指で掬って舐めてみたらとりあえず甘い、決して美味しくはないけど贅沢は言っていられない。

 陽葵は少し生臭い匂いは我慢して少しだけ喉の奥に押し込んだ。


 「お母さん!お姫様がエサを食べたよ!」


 それからしばらくはそんな生活が続いた。


 イスラは週に二回は入浴させてくれるし、一張羅のドレスもお願いして洗濯させてもらえた。

 その間、セレオラが作ってくれた服を着るのですけど、布を二つに折って穴を開けただけの服で、縄文時代じょうもんじだい弥生時代やよいじだいの服のようだったわ。

 

 ドレスはさすがにくたびれてきたわね、新しいドレスなんて手に入らないから仕方ないけど。


 陽葵はなんだか悲しくなって来てまた泣くことが多くなった。


 いつまでこんな生活が続くんだろう。



 しかしこんな生活もある日突然終わった。

 

 それも、もっと悪い方向へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る