第109話 陽葵 飼育される。

 泣き疲れて眠っていた陽葵はやっと目を覚ました。

 周りは知らないうちに明るくなっている。


 周りを見渡すと、テーブルや椅子、まるで物語の中の中世の家の中のような雰囲気ふんいきを漂わせている。

 ただ、中世には似つかわしくないメカニカルな家電?のような正体不明しょうたいふめい物体ぶったいも置いてあった。


 「どこか外国に拉致らちされたのかしら。」


 どう考えても状況は良くないようだ、陽葵はただ自分の顔の血の気が引いていることだけは感じてぶるっと震えて両手で自分の身体をギュッとした。


 とりあえず逃げ、


 そう考えた陽葵は自分がずいぶん高い塔の天辺てっぺんにいることに気がつく。


 下を覗き込むのぞきこむと数十メートルはあると思われる塔の上だった。


 え、え、陽葵は頭がバグる。


 テーブルや椅子が普通にそこにあるのになぜワタシはこんな高い塔の上にいるの???


 その時だった。


 耳をつんざくような意味不明の金切り音が響く。


 思わず陽葵は耳を塞ぎふさぎ目を閉じる。


****


 「お母さん!お姫様目が覚めたよ!」

 そばかすのセレオラは小さなお姫様に手を伸ばす。


 「あ、そうだ、強く握ったら死んじゃうんだっけ、お母さん!どうしたらいいのー。」


 「はいはい、お姫様目を覚ましたのね。」


 イスラは説明書を改めて読む。

 会話するには魔石板タブレットが必要、とある。


 飼育セットの入っていた箱から小さな魔石板タブレットを取り出して横に置き、サイドについている魔宝石を長押しする。


 「あーあー、これで話ができるはず、あなた、私の言うことがわかる?」

 イスラは小さなお姫様に話しかける、小さなお姫様は耳を塞いで目を瞑ってつむっているので気がつかないようだ。


 ****


 陽葵は恐る恐る目を開けて見上げると、そこには昔アニメ「進撃の巨人」で見た二体の巨人が今にも陽葵を食べようとしている場面と同じ光景が目に入り、そのまま陽葵は気を失った。


****

 「あれーお姫様、また寝ちゃったね」


 「そうね、やっぱりすごく疲れているのかもね、寝させてあげましょうね。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る