第108話 タイタン族

 「お母さん!チューリップ咲いたよ!」


 そばかすの女の子セレオラは興奮気味こうふんぎみに母親のイスラを呼びに行く。


 「どれどれ、本当だ可愛い女の子が咲いたね。」


 「綺麗きれいなお姫様だね、お母さん。」

 セレオラは嬉々としてはしゃぐ。


 「うん、そうだね、お姫様が生まれて良かったわね。」


 イスラは自分が想像してたのとは違ったので少し落胆したが、薔薇の花ではないし、3割引にしてくれたからこんなものかなと大人の納得をした。


 「チューリップお世話セットもつけてくれたしまいっか。」


 咲いたチューリップの中には綺麗なドレスを着たイスラの親指ほどの黒髪のお姫様が眠っていた。


 「ねえねえ、お母さん!ちっちゃいお姫様起こしてもいいかな、一緒に遊びたいよ。!」


 「うーん、お姫様は疲れてるみたいだから自分で起きるまでそっとしておいてあげようよ、セレオラ、そうだ、この間にお姫様の遊び道具とか作ってあげたらどうかな?ご飯とか飲み物とかも用意しないとね。」


 「うん、わかったー。」


 「お母さん魔女のアゼリアさんのところに行ってくるわ、育て方とか聞いてくるね。」



 イスラは魔女アゼリアの店を訪ねる。


 「いらっしゃい。」


 「こんにちは!アゼリアさん、この前買ったチューリップが咲いたのよ、初めてだから飼育の仕方とか教えてもらえないかしら。」


 「ほう、うまく育てたんだね、可愛い女の子は産まれたかい?」


 「はい、ちっちゃな可愛いお姫様でしたよ。買って良かったです。」


 「そうかい、それは良かった、注意事項ちゅういじこうだったね、一つ目は力入れて握ったりにぎったりしたらすぐに死ぬからそっと扱わないといけないよ、二つ目は水とエサは朝晩ちゃんとあげること、週に二回は水浴びさせてあげること、それと一番大切なのは一日に何度かフンをするからどこか暗い場所を用意してあげなよ。

明るいところではフンができないからそれでも死んでしまうからね。」


 「アゼリアさん、ありがとう。!」


 イスラは挨拶も半ばあいさつもなかばに慌てて家に帰った、娘のセレオラが握り潰してにぎりつぶしてしまったら大変!


 アゼリアはイスラの背中に向かって叫ぶ。


 「それとガマ避けネットを忘れたらいけないよー!」


 ****


 イスラが慌てて家に帰るとセレオラは小さなお姫様を乗せるための船にしようとくるみのからを半分に割ったものなどをいろいろと用意しているところだった。

 無事にチューリップの中で寝ている小さなお姫様を見てホッと胸を撫で下ろした。

 

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