第106話 フロッグマン

 ブラックビュートの街は大きな湖のほとりにあり、湿地しっちや沼も多く点在てんざいしていました。

 水辺には水棲亜人すいせいあじんが多く住んでおり、リザードマン蜥蜴人フロッグマン蛙人キリフィッシュマン目高人なども暮らしています。


 亜人も例に漏れず、女性の半数は魔女で、アンパス沼で雨乞いをする魔女ルネ・ウルヨワがいました。

 ルネにはヨル、という無口で人見知りの息子がいました。

 ヨルは乱暴者ではないのですが、自沼警備員じぬまけいびいんでほとんど沼から出てこない生活をしています。

 ヨルもそろそろ息子が亜人の中年に差し掛かろうと言う歳に近づき、ルネは息子の将来が心配で仕方ありません。

 どこかにいい嫁カエルはいないかねえ。


 「よう、ルネさん、息子はまた沼に引きこもってるのかい?」


 知り合いのリザードマンが声をかけてくれる。


 「そうなんだよ、息子も嫁でももらってくれるか、婿に迎えてもらってもいいんだけどねえ。」


 「それならサウスポンドのギギさんところに可愛いカエルっ子がいるぜ、お見合いして見ないかい、ちょっと派手だけどいい子だぜ。」


 「そうかい、そしたら頼むよ。」


 ルネは息子のためならどんなことでもするつもりだった。

 

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