第5話 希望

「計……!」


「やっぱり、あのアプリのせいか。みんな、無事? とりあえずご飯持ってきたよ。食べよ」


大量のパンやコンビニのおにぎり、調味料などが詰まった鞄。計は、翼たちの荷物が消えていた事に着目し、可能な限り異世界で役に立ちそうな物を用意していた。


計がくれた慣れ親しんだ食事と、状況説明で落ち着いた少年少女達は計の話を聞き始めた。


「まず、これを見て」


計は、みんなの目の前でプリントアウトした紙を見せた。


「これ、異世界転移アプリの説明画面?」


「これ、俺達じゃないのか? 俺が魔法を使ったのって……まさか、計が?」


「そ、僕がアプリを操作したんだ。ねぇみんな、キャラ作成をしたよね? その時設定したスキル、覚えてる? 僕はね、時空魔法を選んだんだ」


計の手から光が灯り、計の持ってきた荷物が全て消えた。


「時空魔法って……まさか無限収納か?!」


「さすが公平。詳しいね。僕もあんまり知識がなくて、公平が貸してくれた小説を急いで読んだんだ」


「クラスが異世界転移するってやつ?」


「そうそう。参考になるかもしれないし、持ってきたよ」


無限収納から取り出した本を公平に渡すと、公平は本を開いたり閉じたりして感触を確かめている。


「全く問題ねぇな。なぁ、食べ物はどうだ?」


「こんな感じだね」


取り出した食品は、問題なく食べられた。ふと、なにかを思いついた公平は、翼に炎を出して貰い焼きおにぎりを作る。


熱々のおにぎりを半分に分けた公平は計に頼み事をした。


「……あっちい! なあ、計! これを無限収納に入れてくれ」


「分かった」


「これで、おにぎりが熱いままなら計の無限収納は時間も止まるってことだ」


「なるほど……さすが公平。ファンタジーに詳しいな」


「まぁな。こうなったらどうやって生きていくか考えるしかないだろ。キャラ設定の時、魔法を設定した筈だからやってみる」


公平は、手から氷を出した。


「魔法を使おうと思えば使えるな。MPとかあんのか?」


「僕が翼に魔法を使うよう指示した時は、魔力が減ってた」


「……魔力か。なぁ、翼はどんなキャラ設定をしたんだ?」


「俺はよく分からなかったから、パックって書いてあったところから戦士を選んだんだ」


「それ、ここに書いてある。身体能力が上がって、使える魔法は火魔法だけって書いてある」


「俺は自分で設定したから、氷、風、水、土魔法が使える。水、出してみるか」


公平が出した水を、計がコップに取る。


「飲めるかな? 水質検査してみようか」


「なんで中学生が水質検査キットなんて持ってるの?」


聡子の疑問に、翼が答える。


「計は実験マニアなんだよ。小遣いは実験器具を買ってほとんどなくなるらしいぜ」


「この水質検査キットはお年玉で買ったんだ。……よし、飲める! あ、結構美味しいよ。みんな、喉乾いたでしょ」


公平が出した水を配ると、喉が渇いていた面々は水に群がった。

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