第四章 同類
第四十四話 これで最後
「事件に居合わせていた人物、
どのような事実でも受け止める準備をしているのか、警察の目は鋭かった。
僕のすることはたった一つだけだ。何にも動じず、冷静さを欠かず、事実を話すだけ。
「はい、今回の事件を通報した不知火築は、私が高校生の頃の、友達でした」
警察の男は、太い眉毛をゆっくりと曲げ、瞳を縮めた。
これ以上、僕が隠すことはもう何もない。ただ、真実も事実も話す機械になるだけだ。それが、この場を収める一番手っ取り早い方法だ。この後にどれだけの後悔が待っていようが関係ない。どうせ、不知火築は自分が犯人である証拠をそこかしこにばらまいている。いや、自分の犯行を隠す気がない、と言った方が正しい。彼はただ、巻き込みたいだけなのだ。水面に浮かび上がった油のような異常者を袋叩きにするのが大好きな社会の表側に、僕という存在の全てを晒したいだけなのだ。
僕はその罠にまんまと引っかかった。これ以上失うものは何もないのだ。なら、何故ここで自分の過去なんかをひた隠しにする必要がある?
「すべて、話します。不知火築と、僕に、何があったのか」
もう心は痛まない。十分痛み切ったから。
もう誰も恨まない。そうしたってどうもならないから。
もう躊躇はしない。そうしたとしてもことはうまく進まないから。
僕は、口を開く。
事情聴取での僕の自分語りと回想は、これで最後だ。
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