第63話「ならば四人で遊ぶべきでは」
呼ばれて飛び出た割に、全然会話に参加してませんよ私。透け透けおばあちゃんトロルの私の事も紹介して下さいよ。
それはまぁさて置いて。
もうめーっちゃくちゃ脱線しましたから、いい加減に話を進めさせましょうか。
ホントは私が仕切るのは違うと思うんですけど、そうとばかりも言ってられませんからね。
と、思って喋ろうとしたんですけど、そう考えると誰かがちゃんと仕切ってくれるものなんですよ。不思議ですね。
「じゃあさ! 仕事頼んだボラギノには悪いんだけど、明日僕らは全員お休みにしよ!」
「アレックス! 休んでる場合ですか!」
ボラギノ女史はいつだって正論です。
「ボラギノはそう言うけどさ、いま僕らが一番やらなきゃいけない事は何か分かってるの?」
「ロステライドへ赴く準備、特にエリザベータ姫も向かわれるのですから新たな四人パーティの連携や戦い方など――」
「その通りだよ! さすがボラギノだよね」
アレクが食い気味にボラギノ女史の言葉を遮り続けます。
「新たな四人パーティを組むにあたって、何が一番大事?」
「それは……コミュニケーションですとか、絆を育むですとか――」
「それ! だから僕は…………リザとデートするから!」
これはもう決定事項だと、全く譲る事は考えていない勢いをもってそう宣言しました。
さすがのアレクですね。
「な、ならば四人で遊ぶべきでは――」
「ボラギノ? それは本気で言っているの!?」
アレクが見せた事もない、心底驚いたという驚愕の表情とともにそう言いましたが、
「――も、勿論です! 四人パーティなのですか、ら――」
それでも、さしものボラギノ女史でも暴走し始めたアレクにたじたじですね。
「レミとロンは!」
そこで一拍二拍と間をとって再びアレク。
「これから長い間離れ離れになるっていうのに! そんな二人に二人だけの時間をあげるのが優しさってものじゃないの!?」
力強くそう言い放ったアレクは、賛同を得るべく部屋をぐるりと見回しました。
乙女二人に殴られ未だ蹲るジンさんを除いた全員は、なるほど確かにと賛意を示している様でした。
「……お、おい」
頭頂部を押さえながらゆっくりと立ち上がったジンさんです。回復しましたかね。
「なら俺は……明日どうしてりゃ良いのよ」
「え。さぁ? カコナとでも遊べば良いんじゃない?」
「なんで俺があんなガキと――ぐべぇっ」
「バカジン様!」
再び後ろからカコナに殴られたジンさんが倒れます。
なにが、ぐべぇっ、ですか。
学習しなさいよジンさん。
その後、ボラギノ女史へ私の紹介だけなんとか済ませまして、一同は一旦解散です。
気を失ったジンさんもじきに目を覚ますでしょうし、ブランケットだけフワリと掛けて放置です。
ジンさんにだけ私の紹介できませんでしたね。
◇◆◇◆◇
翌朝王城前の広場に、いつもの白い半袖シャツにサスペンダーで吊った緑の半ズボンのアレクが一人でそわそわしていました。
「うーん、どうしよっかな。やっぱり付けようかな? でもな〜」
何か悩んでいるみたいですね。どうしたんでしょうか。
『どうかしたんですか?』
「おはよ! リザのおばあちゃん!」
なんだか気軽にほいほい出てしまう様になりましたね、私。
広場にはあまり人もいませんし大目に見てもらいましょう。
「それがさ、
『そう言えばいつも同じ服ですよね』
「ち、違うよ! これしか持ってない訳じゃないんだよ! 何着もあるけど同じデザインのしかないだけなんだから!」
あら、それは失礼しました。
確かにいつ見ても汚れもない綺麗な服を着ていますね。
『それで何をお悩みなのです?』
「このネクタイを付けようかどうか悩んでるんだ」
これ、と手に握った真っ赤で大きめの蝶ネクタイを私に見せて下さいました。
「ちょっと派手で恥ずかしいかなぁって」
『そうですねぇ、良く似合うと思いますけど……、そうね、リザがきっとおめかしするでしょうから、アレクは地味めに抑えた方が良いかも知れませんね』
「さっすがおばあちゃん! ジンやロンとは違って説得力ある! ありがとう!」
『どういたしまして』
今朝早くに宿へ戻ってきたジンさんにも同じ事を聞いて、『派手に行けよ派手によ! デートなんだから目立ったもん勝ちよ!』とアドバイスを受け、
レミちゃんを迎えに来たロンにも訊ねたら、『俺に分かる訳がない。聞くな』と。
聞いた所で無駄な二人に聞いたアレクが悪いと言っても過言ではありませんね。
そのあと二言三言をアレクと交わし、『頑張ってね』と言い残して私は姿を消しました。
そろそろリザも来る時間です。あんまり私に覗かれても良い気はしないでしょうから。
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