第37話「私は推せますよ、そのカプ」
依然として地べたで泣きじゃくるキスニ姫、怒り心頭のボラギノ・ウル女史。
アレクに許嫁がいた事に困惑を隠せないリザに、僕は認知していないと必死にアピールするアレク十二歳。
ノドヌ・ウル氏はキスニ姫に突き飛ばされたのがクリティカル、頼りになりそうで一度も頼れていないジンさんも未だ目を回しています。
そんなジンさんを見てポーッとするカコナ、最初っから興味を示していないレミちゃん。
ダメですね、コレは。
物見高いアイトーロルの民たちも遠巻きに眺め始めましたが、街の広場でこんな事になれば勿論そうなりますよね。
しかし、このカオスな状況を救うべくして現れたのか、はたまたさらに困惑させる者なのか、ギルドの扉から出た一人の男が顔を見せました。
本当に、なんとかして下さいませ――。
「ロン様……っ!」
レミちゃんがその男を目にしてすぐに息を飲みました。まず間違いなく
現れたロン・リンデルには当然、広場の状況がよく分かりません。
首を捻って辺りを窺うロンを見たキスニ姫もボラギノ姉さんも、ポッとほんのり頬を染めたりなんかして。
相変わらずロンの美しさには何者も肩を並べる事のないレベル。
あ、いえ、アレクがもう少し大きくなれば、並べるどころか追い抜く可能性が充分ありますよ。
ロンは自分の一番近くにいたレミちゃんに疑問顔を向けたその時、ビクリとその身を震わせました。
「レ、レミ・パミド嬢……その後お体の調子はいかがか?」
「平気」
レミちゃんは相変わらず口ぶりこそ無愛想ではありますが、頬が薄ら朱に染まり、いつもの無表情の中に緊張と興奮が見て取れました。
「それは何よりだ。……それで、今日は
「それも平気」
レミちゃんは御自分の鼻の上のほうを指差して続けました。
「
どうやら完成していた様ですね、鼻粘膜の強化魔術。
当然、全身を魔術で強化すれば事足りるんだろうと思うのですけど、常時強化じゃ魔力のコスパが悪いですものね。
精霊力使いの私たちトロルであれば気にしなくても平気ですけど。
「これでいつでもいくらでも、ロン様と居られる。だから結婚して、レミと」
乙女の心は強いですね。リザにも見習って欲しい程に。
再び求婚する為に新たな魔術を作り上げ、さらに衆人環視のこの状況で躊躇なく求婚。
さすがはレミ・パミド嬢です。しびれますね。
対してロンはどう出るでしょう。
「結婚というのは
「そう、
レミちゃんが自分とロンを交互に指差してそう繰り返しました。
それを目にしたロンが、こっくりと頷いて言葉を返します。
「俺で良いのならば、喜んで」
――え。
あっさりOKしちゃいましたけど……え?
「……ね、ねぇ、ロン? 聞いても良い?」
「ん? ちょっと待て――よっと」
ロンがアレクに少し待つようにと返事を返し、ハートの形の目のレミちゃんの側で一瞬
「――ロ、ロン様! これはちょっと、さすがに――」
あのレミちゃんが無表情を崩して慌てています。それもそのはず、お姫さま抱っこなんですもの!
「どうしたアレク?」
「あ、いや、その――、リザと男女の仲になりたい、みたいな事言ってなかった?」
「ん? 言ったが……それが?」
「いや、だってレミにOKしちゃったし……」
ロンの腕に抱えられたレミちゃんが、気を失いそうな表情のままで薄ら鼻血を垂らしています。
良かった。限界を超えたからって脳かどこかの血管が切れるわけではないようですね。
「レミ嬢ともエリザベータ姫とも、できればカコナともなれれば良いと思っている」
「だ――っ、ダメだよそんなの! 男ひとりに女の人ひとり! 中には違う人もいるけど、基本的にそうなの!」
「なに!? 聞いていないぞそんな事!」
確かにアレクは言ってはいませんね。でも、アレクに非があるとは思いませんけどね。
でも、ま、良いんじゃないですか?
とりあえずロン
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます