第11.1話 ことばをおぼえて 前編
やあ、君か。久しぶりだね。今回お話するのは、蒼穹とキニップが手を繋いだ日から間もない頃の話だ。例によって、本編を見てない人にとってはさっぱり分からない内容かもしれないよ。
あおぞらきのみ本編で語れなかった翡翠の塾の事とか、キニップはどんな感じに蒼穹達の言葉を覚えていったのかを2話に分けてお話するよ。
それでは、始めよう。
* * * * * * *
2020年6月3日。蒼穹とキニップが手を繋いだ翌日。蒼穹と翡翠は起床した。
「おはよう、お母さん」
「おはよう蒼穹。昨日は色々あったわね」
「うん、新しいお友達が出来たね。キニップちゃんって、言ってたよね」
「あの子、今日からここで勉強を始めるの」
「そうなんだ。一緒に勉強するの楽しみ」
「そうね。さて、今から朝ごはん作るからね」
蒼穹と翡翠は朝食を食べた後、二人で一本桜の木の下へ行った。仔山村にたった一本ある桜の木。天気の良い日はここでお勉強をする。
蒼穹は塾の仲間達に挨拶した。
「みんな、おはよう」
「オ、おはよウ……」
そこには数十人の仔山村の子供達がいて、その中に昨日出会ったキニップの姿もあった。遠くから来て間もない彼女にとって、ここの言葉には、まだ慣れていない。
翡翠は子供達の前で挨拶した。
「おはようございます!」
「「「先生、おはようございます!!!」」」
元気よく響く挨拶。
「皆さん、今日から新しい友達が来ました。さあ、挨拶して。」
翡翠はキニップを呼んだ。
「ええっト……キニップ・ベリーニです。よろしくおねがいしまス!」
「キニップちゃんは昨日ここに来たばかりなので、みんなで色々な事を教えてあげましょうね」
挨拶が終わると、授業が始まった。今日はキニップに合わせて簡単な授業にした。翡翠は教科書を読み上げる。
「朝起きたら、おはようございます」
塾の生徒達も今の言葉を読み上げる。
「おはようございます!」
キニップもひとつ遅れて読み上げる。
「おはよウ……ございまス……!」
「皆さん、良く出来ました。キニップちゃんもちゃんと言えてましたよ。」
「ワオッ!ありがとウ、ヒスイせんせぇ!」
「何だか嬉しそう」
翡翠に褒められて喜ぶキニップを蒼穹は優しく見つめていた。
「食事の前に、いただきます」
「いただきます」
「いただキ……まス!」
こんな調子で、翡翠は生徒達に丁寧に言葉を教える。
「キニップ、あいうえおの『お』の字の向きが逆になってるよ。」
「あ、ありがト、蒼穹クン……」
蒼穹も自分の知っている事をキニップに親切に教えてあげた。
「今日の給食だ!みんなで食べてくれ!」
「あ、父さん」
雑貨屋の翔多から焼きそばが運ばれてきた。今日のお昼ご飯だ。
「これハ……ナニ?」
キニップは蒼穹に聞いてみた。
「これはね、焼きそばっていうんだよ。ソースの香りが美味しそうでしょ」
「うん!おいしそウ!たべたイ!」
机にみんなの分の焼きそばか並ぶと、塾のみんなで今日教わった言葉を言う。
「「「いただきます!!!」」」
みんなで焼きそばを召し上がる。
「何だカ、オモシロイ味……!これ、イイかモ!」
「でしょ。実はこの焼きそば、僕のお父さんが美味しく作っているんだよ」
「そうなんダ!すごいネ!おとーさんのサンドイッチも出ないかナ!」
「分かった。今度相談してみるよ」
給食の間も、楽しくおしゃべりする二人。蒼穹の父翔多は昔様々なアルバイトを転々としてきた身なので、色々な事を何でもかんでもこなせるのである。近々キニップの父ガンツのサンドイッチも給食のメニューに追加される事だろう。
そんなわけで、今日の塾の時間は終わった。
「みんな、気をつけて帰ってね」
「「「ありがとうございました!!!」」」
「ありがトございましター!!!」
蒼穹と翡翠は、生徒と先生から息子と母親の関係に戻り、家に帰っていった。キニップもウキウキ気分で家に帰っていく。明日も、明後日も、色々な事が覚えられる事を蒼穹とキニップは楽しみにしていた。
後編へ続く。
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