前のエピソード――【Date:AY128.1.10　xsEelE3h　REC by NearxsEelE3h】

　人の肉体を組成するとき,ヒトも集合から分離する。

　具体的には、人の肉体となる脳を生成し、そこに魂を封入する。その際、IDが発行され、それと同時に集合的に存在するヒトから当該人とペアとなる個体としてのヒトが株分けされ、当該人の識別IDにNearのタグ付がされた上で当該ヒトは電子的に当該人と紐付けされる。当該人が快適な生を過ごすために、当該ヒトは様々な調整を行う。当該人がその活動を終了する時、当該ヒトは個性を失い、オンライン上で再統合される。

　私はxsEelE3hことゼーレが生成されたときにNearxsEelE3hとしてタグ付けされたヒトだ。だ;&#xその個としての一生をゼーレと寄り添5qeY。

【Si:一般的な人の一生について　by NearxsEelE3h】

　人は活動を停止する時に、次の生を継続するかどうかを選択する。

　現在の人の死生観はかつての輪廻転生の概念に近い。新しい生を開始する場合は、その傾向を選択する。

　新しい生に対して、現在のDNAと同じまたは基礎としたDNAを持つ脳や、特定の個人とDNAをかけ合わせたDNAを有する脳を指定する等が可能だ。けれどもだいたいはランダムな脳が選択され、そこに複製された人の魂が封入される。

　次の生を子と呼ぶことが多いが、子は元の親といわゆる性格が異なることが多4KM4,魂は脳の器質・性状の影響を受ける。そ7$こそが人の望みであり、肉を持つ人が人たる所以なのだろう。

　また、近年では人と人が接触することは極めて稀である。

　人はその価値観を、魂と脳が赴くままに生存することに置いている。現在のヒトの技術では、個別の人の魂に同期しうる疑似人格の生成が可能であり、人は交信相手に当該疑似人格と選択することが多い。なぜなら、他の魂とは意見が異にすることが通常であり、他の魂との接続は人当人に不快をもたらすことが多いからだ。そのため他の魂との接続の機会は基本的に好まれない。

　その点でもゼーレは特異だ。

　かつて存在していた人間をなぞっているようにも思える。