第10話 王国と領地の話
私は不思議な腕輪の事を思いつつ、眠気を払うために頬をぱちんと小さな手で叩いた。
「お嬢様、眠そうですね。夜は寝る事だけを行い、何かする時は昼間に行う方が宜しいかと思います」
シャーリーは私の行動を見た事で夜中の話を行う。
私は咄嗟の話を信じていないような気がしたけど、今何かを言うのは愚策と思い無言を貫いた。
シャーリーはその後、特に何も言わないままいつもと同じように服を選び着せ替えを行う。
私が頼んでいるフリフリ少なめの動きやすい服に着替え終わると朝食を食べる為、食堂へと向かうのだった。
私は比較的起きる時間が早いと思っているけど、お父様、お母様は大抵いつも座って私を待っている。
いつものように朝の挨拶を行い、運ばれる朝食を食べ始める。
少し前までは手伝ってもらい食べた朝食も一人で食べると気分も違う。
私が美味しいと思う果物が決まって最後に出されるのも嬉しい一つだ。
食後にお話を行うけど、腕輪の話をいつされるかと少し焦りつつ、楽しいお話をした。
あれ?何で二人は腕輪の事聞かないのかな?
服で隠れてるわけじゃないし、食事中も見えているはずだけど、何で?
私はそんな事を思いながらも自ら話をして、何処で手に入れたかと聞かれれば答えにくく、外しなさいと言われても外せない為、何も言われないなら良いかなと思った。
食堂を後にして、すぐに図書室へと向かう。
気になる事があるのと自由な時間は残り短いから。
もうそろそろ、勉強と言う教育が始まり貴族の生き方を教え込まれるらしい。
「きょうは、このくにのれきしを、あつめてください」
「畏まりました」
知らない事が多すぎる。
この国の事、周りの事、様々知りたい!
「歴史関係はこの本のみとなります」
「ありがとう」
国の本が一冊とは思わなかったよ。
簡単に聞いた歴史だと王国の前に沢山国があったはず。
それならもっとあると思っていたから。
読まないと分からない為、置かれた本を手に取る。
分厚く、その分重さを感じる。
私のぷるぷる震える腕を見た為か、シャーリーは本を支える道具を置いてくれた。
これならページを捲るだけなので楽に読めそうだ。
読んでいると、自然にふむふむと言葉を出して頷いてしまう。
時折恥ずかしくなると、じっとシャーリーが顔を見つめ続けていた。
「あの、みつめられるとよみずらいです」
「どうか、お気になさらず。お読み下さい」
視線がとても気になる。
シャーリーは時折、私をじっと見る事がある為、そのまま本を読む事にした。
国の歴史と書いてあるのに、肝心な誰が国を作ったとかが曖昧にしか書いてない。
後は周りの国を吸収して大きくなった様だが、これも曖昧な書き方だ。
まるで検閲されたような感じがする。
普通なら王国になる前の話ももっと載っているはず、元となる国の話は殆ど出てこない。
それに何の理由で国同士が合わさったのかも書いていない、歴史と呼べる箇所は王国になった後からだ。
私はシャーリーに歴史ではなく、以前の国や環境について書いてある本を聞いてみたけど、書庫にはないらしく、王城の書庫にあるかどうかと言われた。
それなら、シャーリーが知っているなら教えてもらおうと聞いてみたけど、今の王国しか知らないと言われてしまった。
明らかに情報を残してない、もしくは、残したくなかったとしか考えれない。
ゲームなら自由に本の内容を修正できるけど、現実は簡単にいかない。
ページを破ればわかるし、前後の文字が繋がりにくく変になる。
書き直すとしても文字は手書きだから、簡単にはいかないはず。
今後、どうにか調べたいと思いつつ、今はできない為、王国や領地の特徴、特産を読むことにした。
王国自体はお父様から軽く聞いている通り、中央に王都があって、囲むように四つの領地が存在する。
各領地に領主の存在と大きな街や小さな町、人が住むだけの村があると書いてある。
基本的に領主の住居、本には領主城と書いてあり、その地域を街と呼んでいるようだ。
ハーヴィー領は王都の南にあるようで、特殊な土地らしく、書かれていることを読むだけでも危険な扱いになっている。
魔獣が強いとか、魔物が危険とか、向かう時は強い冒険者を雇う事が推奨されて、冒険者は腕に覚えがない者は近寄るなとも書いてある。
ハーヴィー領の話がもっと書かれている本は無いのかな?
私はそう思ってシャーリーに聞いてみると、最近作られた本があると持ってきた。
シャーリーは歴史が書いてある本がではなく、お父様が領主になってからの出来事が書かれている本だと教えてくれた。
お父様が行った事が書いてあるなら読みたいと思い、ウキウキした気持ちで読み始めることにした。
様々な目録が書いてあるけど、先に歴史の本で気になった危ない理由を読むことにする。
内容は少し重複していたけど、王国内で冒険者組合が一番盛んな領地らしい。
危険が多い代わりにお金稼ぎや自身のランクアップを見込める為、沢山集まるようだね。
領地を行き来する護衛依頼も報酬が多いようだけど、それを狙った盗賊も出没している。
盗賊を討伐するためにお父様は冒険者組合に依頼発行や王国の仕組みとは違う地方騎士という組織を作って、領地の各貴族も討伐に力を入れているようだ。
読み進めていくと他にも理由が書いてある。
ハーヴィー領は王国の中でも二番目に古代遺跡があるみたいで、定期的に新しく見つかると書いてある。
それはハーヴィー領の周辺に未開地と呼ばれる危険生物や危険地域があるようで、お父様が開拓の為に定期的に冒険者組合に依頼発行をしているらしく、その都度新たな古代遺跡が見つかるみたい。
未開地付近に鉱山もあるらしく、冒険者への護衛や魔物討伐の依頼は沢山あるみたいだ。
他領とは違って、暮らしやすい領地と書いてあるけど、細かくは書いてない。
今度、お父様に聞いてみよう。
冒険者が多いと自然に人も多く活気溢れる街になる。
行商人も行き来が多くなり、それを案じて王都まで繋がる長い街道を作ったようだ。
大抵の領地で作られている道は草を省いた程度が多いらしく、ハーヴィー領の街道は魔法で固められた地面を主に魔物避けとなる灯や定期的に兵士の巡回もあるようで、魔物や盗賊被害を抑える目的も兼ねている。
これにより、人の往来は多くなり、ハーヴィー領からの特産品も王都や他領に出荷しやすくなったようだ。
ふむ、読む限りお父様はかなりのお金を使っているみたいだね。
他領はしていない事を考えると、お父様の政策は少数、普通なら反発もありそうだけど、それについても書かれてないや。
読むと読むだけ気になる事が出てくるね。
一旦本を読み終え、シャーリーに王国の地図はないかと聞いてみた。
地図があれば、私が知っているゲームの土地と照らし合わせることもある程度可能となる。
未開地と呼ばれる危険地帯も気になるので聞いたのだ。
「私が知る限りですが、地図は王国が厳重に保管管理して、王城内にしか存在しないはずですね」
シャーリーは私の質問にそう答え、理由を教えてくれた。
重要保管されている為、持ち出しも禁じられ、正確な地図以外なら冒険者の収入源として簡単な即席地図があるようだ。
それも簡単に売り買いはできないらしく、冒険者組合が冒険者から買い取り、冒険者組合はその地図を販売する。
金額は高く、買える人は限られるようで、購入者も記録されると教えてもらった。
紙を作るのも高価となり、大半は羊皮紙に書くようだ。
書いた文字や図面は乾くまで時間がかかったり、修正が難しく書き間違えると大損になる。
冒険者は複数人で集まりお金を出し合い、書く人を決めて各地を回るらしく、それでも売った際は凄く儲かるようだ。
シャーリーの話を聞いて少し不可解に思った事がある。
話を聞く限り地図は貴重かつ重要な物、よく考えれば、他国や悪事を考える者なら欲しがると思う。
そのはずが、地図を作る事を禁じず、冒険者組合が仲介して記録するとはいえ、販売まで行うのを禁止しない理由。
おそらく秘密裏に個人間でやり取りしたりもあるはずだし、言うなれば誰でも紙やインクさえあれば作ることは可能となる。
もちろん全てを禁止する事はできるはずもないけど、何か変に思える。
変に考えすぎなのかも、中途半端にゲームの知識があるからアレコレ考えちゃうのかな…
それにしてもハーヴィー領の事をこれだけ書いてある本、一体誰が何故書いたのかな?
私は本を隈なく見たけど、書いた人の事は書かれていなかった。
シャーリーに聞いてもわからないそうで、そもそも本の作者は不要情報として伝わっていないそうだ。
他領について同じような本があるのかと聞いてみると、わからないと返ってくる。
それもそのはず、普通は書いても売れそうにないと思う話だから、それなら冒険譚とかの方が高く売れるはずだ。
気にしすぎかな、まるで誰かに読ませる目的のゲームに登場するような解説本に思えた。
私は考えても仕方がないと思い。今日は夜、腕輪について試したい事がある為、シャーリーに部屋へと戻る事を伝えようとした時、激痛が発生したのだ。
「いたい…」
急に頭が痛くなる。
私は両手で頭を押さえたが、意味はなかった。
い、痛い、何これ!!
シャーリーが異変に気がつく前に私は座っている子供用の椅子から痛みに耐えれず床に落ちた。
それを見たシャーリーは驚き焦りを隠せないまま、床に倒れて痛みから自然に身体が動いてしまい転がる私を心配したのだ。
「お嬢様、大丈夫ですか!」
「あたま、いたい…」
何とか声を出したが、それ以降は唸る様な声しか出せなかった。
頭が割れるような痛み、それだけでなく、息も苦しく何も考えられなくなる。
勝手に涙が流れてしまい、シャーリーは何か言っているみたいだけど、うまく理解できない、痛みに耐性はなく、それはゲームに存在しないからだ。
これが、あの時言ってた頭痛なの…
痛みで何も考えれないよ。
誰か助けて…
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