第9話 特別な装備
夢
誰でも見る記憶の整理と学んだ。
それは強い記憶を具現化する場合や組み合わせから見た事ない景色、人物等も登場する。
目が覚めれば、時間と共に薄れる。
曖昧な記憶だからだ。
最近見る夢は決まって創世の杖が現れる。
何度か見ていると起きた後も記憶に残り、夢の中では壊れない創世の杖が崩れるように壊れていた。
その夢は何か伝えたい事があるようで、起きた直後に覚えている限り言葉に出して足りない箇所を埋めるような夢の出来事を強く記憶に刻むのだ。
初めて創世の杖を夢で見た後、何度も次元収納を見返している。
無いものが現れるはずもなく、見つけれなかったが、夢を見続けると夢の中で崩れた創世の杖が一塊の腕輪に変わったのだ。
その夢を見てすぐ目覚めると、真夜中だったが、私は気になることがあり、次元収納を脳裏に浮かべた。
直感でしか無い、ありえない事が既に起きている今、夢に出た腕輪も何か意味があるはず、そう思い、今までは創世の杖を探していたが、違う物を探すことにした。
夢で創世の杖は腕輪に変わった次元収納に存在しない装備、単なる夢なら知らない物は見えないはずだ。
数が多いから探しにくい、と思いながらも必死に探そうと集中し続ける。
入手順でソートできるなら、どれほど楽だろうか…
「やっぱり…」
いつの間に?転生した時?
知らない道具が数個入っていたのだ。
その中で異彩を放つ名前、武器らしいのだが、初めて見る名前だ。
『ワールドディスラプト』
これは私の憶測にすぎないけど、創世の杖が消えた代わりに生成された武器だろう。
他の道具も世界を跨いだ時に持ち越せない道具が変換されたと思う。
腕輪らしき名前は見つけれなかったが、いずれも知らない未知の道具、そんな物を見つけてワクワクしない人は居ないだろう。
魔法使いは探究心を無くしたら終わる。
知らない武器があれば見てみたいのだ。
頭の中で念じる事により、次元収納から手元の空間に取り出した。
「なにこれ…」
私の背丈より大きな杖が宙に浮かんでいる。
創世の杖とは形も違う。
魔眼がないはずの今、杖から流れる恐ろしい魔力が凝縮された事で可視化されている。
形は剣にも見え、刃は六属性の魔力が合わさる虹色の光、周囲に六つ浮かんで回る結晶は大精霊の抜け殻に見えた。
心臓の鼓動が早くなる。
杖の前に立つだけで苦しく威圧感がある。
私は気がつくと右手を前に出していた。
私の小さな手に収まり、応じるように杖は形を変えたのだ。
『貴方が世界を帰すお手伝いをしてあげるね』
握った瞬間に頭の中を反響するように声が響いた。
創世の杖は擬似人格を持っていたはず、それが変質化した結果?
理由は不明、理解も不可能、分かるのは力の一部という事と戦う術が少なくなった今必要な力だ。
コンコンと扉が叩かれた事で、ハッとなる。
「お嬢様、夜分遅くに失礼致します」
気がつく先程の杖は消えて、代わりに私の右腕に一つの腕輪が付いていた。
六つではなく、七色の宝石が付いた腕輪に変わっていたのだ。
「お嬢様、起きていたのですね。真夜中ですので、お身体を休めて下さい」
「おてあらいのかえり」
「そうでしたか…特に問題は無さそうですね」
シャーリーは部屋に入ると、起きている私を見て話をした後、辺りを見渡してそう言った。
咄嗟に嘘を言ったが、信じてもらえたらしく、私はシャーリーに何かあったかと尋ねると、言葉にできない恐ろしさを外から感じたようで、安全確認に訪れたようだ。
あの杖は相当強い力を持っているはずだ。
ある種の生業なら殺気に敏感と思うけど、シャーリーはどうやって察したのだろう、聞いてもメイドの必須スキルとはぐらかされるはすだ。
「お嬢様、その腕輪は一体?お休みになる前は身につけて無かったですよね?」
「えっと、たいせつなうでわだよ!」
シャーリーは納得したのか腕輪を再度見た後、寝る時は外さないと危ない事と何かあれば呼んで欲しいと言い残し、部屋から出て行った。
真夜中に大きな力を感じれば驚くのも無理はない、それにしてもシャーリーは本当に凄いと実感する。
そう思った数秒後に凄さと同じぐらいの怖さを感じてしまった。
恐ろしい気配を感じて飛び起きたと思ったけど、前にも言ってた通り寝ていない、そして寝ずに見張られてる可能性がありえる。
そう思ったけど、それなら咄嗟に言った嘘は分かるはず、起きていた事に驚いたからやっぱり違う、それに寝ないで見張るなんて出来るはずないよね。
ふへ…私が焦る必要は一切ないけど、驚いたよ。
結構前から分かってたけど、プライベートが殆どない…子供だから仕方がないかもだけど、何とか考える必要ありそうだね。
さて、腕輪になったままだけど、これどうやって使うんだろ?
各宝石は綺麗で目が奪われる。
特に七つ目、本来なら存在しない属性に当てはまるであろう宝石は見ていると吸い込まれそうだ。
ふぅ…
深呼吸を行い目を瞑る。
意識を腕輪に集中させて、身体の中を移動する魔力と結びつける。
繋がった…
通常の魔法武器は特定行動時に魔力を吸い取るけど、この方法で魔力直結ができるなら、多分この腕輪は常時解放の効果を持つはずだ。
何か効果を発揮している事は理解できる。
それ以上は理解できず、手を振ってみるも何も起こらず、魔力を流して掌を翳すも何も出ないのだ。
「むむむ…わかんないや」
もういいやと腕輪を外そうとする。
「へっ?」
外れないのだ。
「う、うそでしょ!」
力が弱いから外れないのではなく、感覚から外せないと理解する。
外せない装備、呪いでもあるのか?と思うも調べる事はできないので、害がないなら今は気にせず寝ようと朝まで再度寝ることにした。
呪いの装備は大半が不利効果を発動する。
腕輪からは何を感じないので、一先ずは安全と思ったからだ。
眠気から欠伸を行い、ベッドに横たわるとすぐに意識は夢の世界に再度向かうのだった。
また夢を見ている。
あれは私?
私が誰かと戦っている。
ゲームの時なのかな?
第三者として私の戦いを眺める。
この身体で戦った記憶がない以上、ゲームの出来事のはずだ。
不思議な事は私の身体は今と同じ幼い状態だったが、夢は混ざることから気に留める事はなかった。
ゲームだと決めつけた理由は他にもあり、戦う私は精霊を行使していた。
今の私には精霊を行使できる契約は残っていない事や契約を行おうにも魔力を見る魔眼も無いので、まず不可能。
将来的には何とかしたかったが、今はできない事だ。
何の意味があるかわからない夢を見続けて、夢の中では私がよくわからない敵を倒し終えた。
ちょうどタイミングよく、覚醒感覚を感じると夢が薄まり、朝の目覚めを行うのだった。
「ふわぁ〜すこしねむねむ…」
しょぼしょぼする目を擦り、身体を伸ばす。
その頃には夢の内容は殆ど覚えてなく、少しは残る創世の杖と違い、記憶の整理としての夢だと確信したのだ。
「きょうもいいてんきだね」
窓から入る朝日を浴びて、聞こえる小鳥の囀りを楽しむと扉がノックされ、いつもの朝が始まったのだ。
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