第8話 見えない精霊

 私は日々調べ事の繰り返しで、ある程度この世界を理解できた。

 お父様から歴史や常識も最近聞かされる。

 夜に抜け出せない事も多くなると、仕方がないので部屋の中で魔力を使ったりと一日も無駄にしないのだ。


 夜皆が寝静まる時、ムクリとベッドから起き上がり、部屋の中に誰もいない事を確認すると作戦を決行する。

 万が一を考え、ベッドに膨らみを作る事でバレないはずだ。


 朝起きる時はシャーリーがすぐ来るのに夜は来ない、いつも思う疑問だったが、よく考えれば寝ている時間という事だ。


 窓から夜風を感じで、飛行魔法を使い外に出る。とても涼しく、独特の感じは言葉にできない良さがあるから好きだ。


 高く飛ぶとその分魔力を使う、低すぎれば誰かに見つかる恐れがあり、なかなか難しい状態で私の隠れ家的な森へと降りたのだ。


 地面は所々抉れ、岩は砕かれ飛び散り、自分で行っておいて悲惨な状況だと思う。

 この森は日中も人は来ることがないようで、騒ぎになっていないようだけど、誰か見たら何事かと騒動が起きるのは間違いないはずだ。


 そんな事を考えながら、いつもと同じように魔法を使う。

 魔法が載っていた本に記載されていた精霊、本では精霊に魔力を送り精霊が魔法として再現するとあるが、何度も確認する限り、間違っている情報だ。


 この世界はそうなのかもしれない、そんな事を始めは思っていたけど、無詠唱で使える時点で違う。

 確実なのは精霊を見れれば良いけど…


「せいれいさん、すがたみせてください!」


 いつもと同じ無反応、元素を扱う精霊は自然そのもの、これだけ破壊活動をすれば当たり前に思える。

 上位精霊じゃない限り、自らの意思では姿を見せれない、怒っているのか…近くにいないのか…

 魔眼さえあれば、魔力が見えればある程度は分かるけど、無いものを強請っても意味がない、それに仕組みも大体わかったので、納得することにした。


 モヤモヤを晴らす目的じゃないけど、天に向かってファイアボールを投げると綺麗に飛び空高くで爆けるのが楽しく思える。


「かえろう」


 帰りの魔力は残しているので、何度か魔法を繰り返し、一定まで減った感じになると窓の間部屋に戻ったのだ。


「ふぁぁあ、ねむい」


 魔力消費で疲れが発生し、眠気を感じる。

 寝る前にいつもと同じ確認をしたのだ。


 次元収納の中にある装備、中でも私に関連性が高く、精霊と繋がる創世の杖という魔法武器だけど、何度確認しても存在しなかった。


 他の道具は大半あるのに何故?と思い確認を何度も行っているけど、見つけれない、大精霊が六属性宿るので、魔眼が無くても意思疎通できればと思ったけど、間違いなく存在していなかった。

 それは同時に私の仮説が現実的になり、精霊は道具じゃないから引き継げず、転生時に存在していない、精霊を宿す創世の杖も同時に消えたという考えだ。


 この世界にも精霊はいるはず、私が知っている精霊がいないだけ、できる事も多く、あるだけで心強い杖がない以上、違う装備を考えた方が良さそうだ。


 そんな事を考えていると、思考の限界から意識は消えたのだ。


 色鮮やかな夢、見慣れた杖、寝る直前まで考えていたなのか、創世の杖が現れた。

 世界を二分化した力の余波を集め作った杖、残りの力で精霊郷を作り、大精霊を創造した。

 交わる事のない世界を繋げる杖だ。


 あれ…

 そんな杖だっけ…


 ふと、気になってしまったが、夢の中で気にしたところで無意味、夢は夢だからだ。


 それなら諦めるためにも夢の中で見ていた方がいいと思うのだ。


 夢特有の第三者視点から見ていると、今の私に近いようで違う私が創世の杖を持っていた。

 願望を強く抱きすぎた結果、見せてしまったのだ。


 夢の私は創世の杖を使い大精霊を呼び出し、身体に纏う。

 鎧や武器に変わり、次々と魔物を倒していたのだ。


 夢にあれこれ言う意味はないけど、過剰戦力だ。

 各々が強い精霊装備、夢でも見てしまうと欲しくなる。

 知らない力じゃない分仕方がないのだ。



 それにしても、夢の私に似た私は無駄が多い、強い力を持っているなら短時間で決着をつける方がいい、なのに手加減しているのか、相手を傷つけたくないのか、攻撃の手数も少なければ、威力も低く見えるのだ。


 そんな変な夢を現実の覚醒感が発生するまで見ていたのだ。


「へんなゆめだった?」


 小さく欠伸を行い、多分変な夢を見ていたような曖昧感に頭を傾け、タイミングよくシャーリーが入ってくる。


「お嬢様、おはようございます」


「シャーリー、おはよう」


 挨拶を行い、今日も元気に一日を過ごすとしよう。

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