第4話「学校探検」

 校舎を2人で歩く。


 放課後とはいえ、何人かの生徒とすれ違う。中には、クラスメイトの女子もいた。

 あの高嶺の花と2人で歩いているので、ジロジロ見られるかと思ったが。そんなことはなかった。気にしすぎていたのだろうか? 


「クレアさんと2人で歩いてるから、もっと噂されるかと思った」


「気づかれないようにしてるのよ」


「もしかして魔法? どうやって?」


「あんまり騒がないで」


 そう言って、彼女は小声で説明を続けた。


 認識阻害魔法。


 彼女が廊下の真ん中を歩いたとしても、彼女の存在を認識できず、そこに誰もいないように感じるそうだ。

 だが、大きな音をたてたり、物理的に干渉してしまうと効力を失う繊細な魔法らしい。


「あれ? 俺、クレアさん見えてるけど」


「教室で会った時から不思議だったけど、見えるみたいね」


「もしかして、俺って魔法の才能あったりして」


 そう言うと、彼女が振り向き、じーっとこちら見つめる。


「魔力の欠片も感じないわね」


「そうですか……」


「そもそもコッチで、魔法を使える人なんて見たことないけど」


 ヒソヒソと会話を続け、目的地に到着する。


 教室で話し合った結果。体育館を調査しに行くことになった。


「今日は部活が休みだから、中に誰もいないね」


「そうね。と言っても、体育館は授業中に何度か来たし、あまり見る所もないけど」


「そうなんだ。じゃあ次に行く?」


「いや、あそこ。まだ見てないの」


 そう言って彼女が指差す方向を見る。


 体育館倉庫。


 そんな地味な場所に魔王が隠れるのか疑問だが。確かに隠れる場所は、地味なほうがいいだろう。


「鍵がかかってるんじゃないかな?」


「普通の鍵なら魔法で開けれるわよ」


 魔法ってすげぇ。

 

 彼女は、そのまま体育館倉庫に向かい、中に入っていく。


 倉庫の中は暗く、奥に入っていった姿が徐々に見えなくなると……


「入ってきちゃダメ!!」


 大きな声が響く。


 咄嗟に体が動いた。


 声が聞こえなかった訳では無い。

 ただ、彼女の鬼気迫る声を聞いて、自分だけ逃げ出すなんて考えられなかった。


「大丈夫!?」


「バカ! なんで入ってきたの!」


 突如、暗い壁に薄紫色の細い光が走る。そのまま四方に伸びると、後ろの扉が勝手に動きだし、体育館倉庫を閉鎖する。周囲の光が完全に繋がると、光は消えた。


「ごめん。助けなきゃって思って咄嗟に……」


「私は勇者よ? アンタが助けられる訳ないでしょ!」


「ごめんなさい」


「はぁ……まぁいいわ。閉鎖結界だけみたいだし」


「……閉鎖結界?」


「時間稼ぎみたいものよ。ここから暫く出られないようにする魔法ね。……もしかしたら近くに居たのかも」


「なら、すぐに脱出しないと」


「脱出する方法はあるけど……今すぐ出ようと思ったら、体育館ごとブッ壊すことになりそうね」


「……」


「なによ? だからやってないでしょ?」


 そう言って彼女は、積み上がったマットの上に飛び乗ると腰を下ろした。


「どうするの?」


「この閉鎖結界は簡易なものだから、時間が経てば弱まるわ。そうしたら脱出できるはずよ」


「待つしかないって事か……」


 見上げると、彼女の白い足が目に入る。あの細さでどうやって、自分より背の高い場所に飛び上がれるのだろうかと考えていると、視線を感じる。


「今、めっちゃキモい顔してるわよ。私の足を見ながら」


「ごめん。いや、違う。違う。」


「アンタが変な気を起こしても、私に勝てるわけ無いでしょ」


「……そんなことより、魔王はいいの?」


「閉鎖結界だけで時間稼ぎって事は、まだ魔力は回復してないのよ。普段のアイツならこんな生温い事してこないわ」


「体育館を壊して騒ぎになるほうが、面倒ってことか」


「そ。だからしばらく休憩」


 しばらく無言が続いた。


 何か話しかけたかったが、足手まといになってる気がして、気安く話しかけられなかった。


 手持ち無沙汰に周囲を歩いている俺を見かねて、彼女が話しかけてくる。


「ねぇ。なんでそんなに魔法が好きなの?」

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どうやら彼女は異世界人 ハザマ @hazamadesu

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