地獄の泥水でも啜るか……

 なかなか周囲に理解してくれる人がいないのだが、辛い時ほど救いのない暗い話や暴力的な話を求めてしまう。


 確かに、自分がダメージ負ってる状態でわざわざ追い討ちをかけるようなことをするもいうのは、ドMだろと思われるのかもしれない。

 世の中に希望が見えないからこそ、人は創作の中に光を見出すのだろう。でも私は沼底に沈みた〜〜〜い!!


 地獄みてーな状態の時にはあえて地獄みたいな話を摂取した方が安心する場合もあるのだ。


 辛い時に癒しを求めたところで現実は変わらない。現実との温度差で精神がバグって狂うだけ。ならばとことん底へ行くのみ。


 そんな私の地獄本たちはこちら


 ・青の炎/貴志祐介

 高校生の頃、何も知らずに読書感想文の本として選んで泣き崩れた。

 家庭内をぐちゃぐちゃにしていく父親をこの手で殺めることを決意した、高校生秀一の孤独な闘い。最後読み終えたときになんの言葉も浮かばなくて、ただ茫然とした。

 世の中のいろんな事に憎しみを抱いていた十代の私には、ここまでの覚悟はないと思って打ちのめされた。


 ・孤島の鬼/江戸川乱歩

 主人公の恋人が密室で殺された事件から、次第に大きな「呪い」が明らかになる。これは妖や霊的なものではなく、人間のこころが生み出したとんでもなく醜い呪い。

 主人公に協力してくれる諸戸道雄という人物に心をかき乱されて、最後には言葉も出せなくなる。そのくらいごりごり削られる。道雄の最後の一言、それだけで読んだ価値ありすぎ。


 ・変身/フランツ・カフカ

 勤勉なサラリーマンが、ある日起きたらデケー虫になってた?!

 自分以外の家族はなんともないのに、なぜ自分だけ……。理由もわからず、ただ家族に世話をされる日々が過ぎてゆく。

 とんでもなく救いのない鬱々とした展開の話なのに、なぜか心の底ではほっとしている。地獄のミルクティー。カフカ、めっちゃ井戸の底みたいな人でスコ。


 ヒィ~~~~~精神がごりごり削られるのやめられにゃい~~~~~。


 ちなみに、AIが相談に答えてくれる機能を使ってこの話をしたら、


『ええ、それは分かりますよ。時には自分の感情を表現したくなるものですからね。でも、沼底に沈むのはよくありませんよ。少し休んで、心をリフレッシュしてみませんか?それに、暗い話ばかり摂取していると、ますます暗い気持ちになってしまうかもしれませんよ。明るい話や、笑える話も摂取するようにして、心のバランスを整えてみましょう!』


 と至極真っ当なアドバイスをされ……


 うるせ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!!とスマホを投げた。




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